外国人雇用でもらえる

助成金等について

1) 助成金と補助金の違い    

助成金制度及び補助金制度によって支給された資金は原則返還不要です。


厚生労働省が管轄する助成金は、「雇用の安定や人材育成」を目的としているのに対し、補助金制度は経済産業省や地方公共団体が管轄し、「公益性が認められた事業の促進」を目的としています。


助成金は要件を満たしていれば交付されますが、補助金は決められた期限内に厳しい選考を通過する必要があるので、取得のハードルは高くなります。


ですが、補助金は種類が多く、比較的まとまった額が支給されるため、申請する事業者も少なくありません。



今回は、外国人材を採用・雇用維持した場合に利用可能な5つの助成金制度とその他の支援事業についてご紹介します。

ただし、紹介する助成金制度は、外国人を雇用していれば適用されるわけではなく、別途要件を満たす必要があります。

2) 人材確保等支援助成金    

外国人就労者の中には、日本固有の雇用慣行に対する知識不足や言語、文化の違いからトラブルに発展しやすい傾向にあります。


そのため、人材確保等支援助成金は、外国人特有の事情に配慮した就労環境の整備を行い、外国人就労者の職場定着に取り組む事業主に対して、その経費の一部を助成するものです。

) 支給要件


①外国人労働者を雇用する事業主であること(外国人労働者の在留資格は問いません

②認定を受けた就労環境整備計画に基づき、下記の就労環境措置を新たに導入し、実施すること(❶および❷の措置に加え、❸~❺のいずれかを選択すること)


 ❶雇用労務者の選任

 ❷就業規則等の社内規定の多言語化

 ❸苦情・相談体制の整備

 ❹一時帰国のための休暇制度の整備

 ❺社内マニュアル・標識類等の多言語化


③就労環境整備計画期間終了後の一定期間経過後における外国人労働者の離職率が10%以下であること



助成を希望する事業者は、就労環境整備計画を作成し、提出期間内に本社の所在地を管轄する都道府県労働局へ提出して下さい。



受給額


外国人を雇用する事業主が外国人労働者に対する就労環境整備措置を実施した場合に、支給対象経費の合計額に下記の区分に応じた助成率を乗じた額



生産要件を満たしていない場合・・・支給対象経費の1/2(上限額57万円)

生産要件を満たしている場合・・・支給対象経費の1/3(上限額72万円)



生産要件とは、生産性の伸び率が要件を満たしている場合に、助成の割増等を行うもの



◆支給対象経費とは


計画期間内に、支払いが完了した以下の経費

 (1)通訳費

 (2)翻訳機器導入費

 (3)翻訳料

 (4)弁護士、社会保険労務士等への委託料

 (5)社内標識類の設置・改修費



詳細は厚生労働省のホームページ をご覧ください。

3) 雇用調整助成金

雇用調整助成金とは、景気の悪化による事業の縮小にあたって、すぐに人員削減に走るのではなく、

雇用調整(休業・教育訓練・出向)を通して雇用維持を図ることで、従業員の雇用不安を解消することを目的としています。

支給要件


以下を満たす事業主・労働者に適用されます。


①雇用保険の適用事業主であること

②直近3か月の売上高、または生産高が前年比で10%以上減少していること

③直近3か月の雇用者数が前年比で規定人数以上増加していないこと

④休業、教育訓練、出向のいずれかで雇用を守ること

⑤過去に雇用調整助成金を受けた場合は、前回の対象期間が終了した翌日から1年を超えていること

⑥労働者が休業または出向などをはじめる前日までに同じ事業所で6カ月以上勤務していること



なお、技能実習生は休業・教育訓練・出向のうち休業のみが適用対象となります。

技能実習生を休業させる場合には、監理団体に相談しましょう。

その他の在留資格で働いている外国人は、日本人と同様に上記要件を満たせば対象となります。


受給額


中小企業・・・賃金に相当する額の2/3

中小企業以外・・・賃金に相当する額の1/2



労働者1人あたりの上限額は、令和4年8月1日時点で8,355円です。

そのほか、教育訓練を実施すると、1人1日あたり1,200円が加算されます。



詳細は厚生労働省のホームページ をご覧ください。

4) 特定求職者雇用開発助成金

高年齢者や障害者等の就職困難者をハローワーク等の紹介により、継続雇用した事業者が利用できる助成制度です。


求職困難者には、60歳以上の者、ひとり親世帯、身体障害者、知的障害者等が含まれます。令和4年5月30日より、ハローワークを介してウクライナ避難民を継続雇用する事業者も対象となりました。

外国人であっても、要件を満たせば、助成が適用されます。

支給要件


①ハローワーク又は民間の職業紹介事業者等の紹介により新たに雇い入れること

②雇用保険一般被保険者として雇い入れ、継続して雇用することが確実であると認められること



なお、新たに雇い入れることが必要なので、雇入れ日の前日から過去3年以内に同一の事業所内で就労・研修経験がある場合には、対象外です。過去に実習などで受け入れた外国人を雇用する場合には注意しましょう。


受給額  


週の勤務時間が30時間以上の従業員の場合



60歳以上の者、ひとり親・・・1年で60万円(6ヶ月ごとの支給額

身体・知的障害者・・・2年で120万円(6ヶ月ごとの支給額)


詳細は、厚生労働省のホームページ をご覧ください

5) キャリアアップ助成金  

キャリアアップ助成金は、パート・アルバイトなど非正規従業員の待遇改善を支援する助成制度です。

全部で7つのコースがありますが、よく利用されているのが正社員化コースです。

支給要件 


対象となるのは以下の取り組みをした事業者です。

〇非正規労働者を正社員化すること

〇期限付きの雇用契約を無期限に変更すること

〇派遣労働者を受け入れ先で直接雇用する



このように、「正社員化コース」といっても、必ずしも「正社員」である必要はありません。



なお、正社員化コースの対象となるのは、基本的に永住権を取得した方に限られます。

なので、技能実習生や、技術・人文知識・国際業務、家族滞在などのその他の在留資格の方には適用されません。


受給額


有期雇用→正社員・・・57万円

有期雇用→無期雇用・・・28万5000円

無期雇用→正社員・・・28万5000円



申請をする場合は、非正規社員から雇用形態等を変更し、正規雇用労働者、無期雇用労働者としての賃金を6カ月分支給した日の翌日から2カ月以内に申請しましょう。



詳細は、厚生労働省のホームページご覧ください。

6)トライアル雇用助成金

トライアル雇用助成金とは、トライアル雇用をした場合に支給される助成制度です。

トライアル雇用とは、職業経験や技能、また知識などから、安定的な就職が困難な求職者を試験的に3カ月間雇用する制度です。

求職者の適性や業務遂行可能性を見極め、求職者と求人企業の相互理解を促進することを通じて、早期就職の実現や雇用機会の創出を図ることを目的としています。

外国人労働者にも適用されます。

①)支給の要件

◎トライアル雇用の条件

以下のすべてに該当

・ハローワークや紹介業者などを通じて雇用すること

・トライアル期間は3カ月であること

・1週間の所定労働時間が30時間以上であること


労働者の条件

以下のいずれかに該当

・紹介日の前日から過去2年以内に離職・転職が2回以上あること

・紹介日の前日時点で1年を超えて離職中であること

・妊娠や育児などを理由に離職後、紹介日の前日まで1年以上安定した仕事に就けていないこと

・紹介日にニートやフリーターであり、55歳未満であること

・生活困窮者やひとり親など、特別な配慮を要すること


)受給額

トライアル雇用助成金の支給額は、支給対象者1人につき月額4万円です。

対象者が母子家庭の母等又は父子家庭の父の場合、1人につき月額5万円となります。


最長で3か月分支給されますが、トライアル期間の途中で離職等すれば減額されます。


詳細は、厚生労働省のホームページ をご覧ください

7その他の支援制度

①)外国人雇用管理アドバイザー制度

厚生労働省では、「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」を策定しており、この指針に基づき事業者への指導・援助を行うため、各都道府県に外国人雇用管理アドバイザーを設置しています。


外国人労働者の雇用管理の改善や職業生活上の問題などについて、専門的な知識や経験を有するアドバイザーが、各事業所の悩みに応じた相談・指導を無料で行います。


相談のお申込みは、ハローワークで受け付けています。

)ハンドブックの作成

2018年12月に決定された「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」等を踏まえ、経済産業省、文部科学省、厚生労働省は協同して、プロジェクトチームを立ち上げました。

3省は企業が外国人留学生等の多様性に応じた採用選考や採用後の柔軟な人材育成や待遇等を実践できるように、企業が特に押さえておくべき12項目のチェックリストや企業事例を整理した「外国人留学生の採用や入社後の活躍に向けたハンドブック」を作成しました。

ハンドブックは下記から見ることができます。

➡文部科学省 「外国人留学生の採用や入社後の活躍に向けたハンドブック」


③) 国際化促進インターンシップ事業

この事業は、経済産業省が実施しており、日本企業の海外進出の促進、新たな発展に向けたイノベーションの創出、海外大学とのネットワーク構築を目的としています。

日本国内に主な事業所を有する中小・中堅企業が、外国人材を1カ月程インターンとして受け入れる事業です。

参加形態は、インターン生が自宅から企業に直接出向く「直接参加型」、海外から来日し宿泊を伴う「来日型」、大学などの施設からオンラインで業務を行う「施設オンライン型」があります。コロナ禍でも参加できるように体制を整えています。

受入企業に対しては、人材育成費として1回の受け入れに対し、2,100円×勤務日数を支給しています。

詳細は、経済産業省のホームページ をご覧ください。

8) まとめ


この記事では、助成金制度等の外国人を雇用する事業主向けの支援について紹介しました。


外国人雇用には、様々な壁がありますが、企業のグローバル化への貢献や新たな価値観の創出など企業側の成長発展も期待できます。



今回紹介した助成金などを上手く活用して、優秀な外国人材を雇用してみてはいかがですか。