外国人と話す日本語
外国人がどのように日本語を学んでいるか、私たち日本人が外国人と話すときにどうやって話せばいいか、意識したことはありますか?
言語は、日々の生活を送るうえで欠かせません。その中でも日本語は、最も難しい言語とされています(アメリカ国務省HP)
そこで外国人を雇用している企業にとっても、彼らと言語を通してどのように関わっていくべきか知っておくのはとても重要です。今回は日本語に焦点を当てご紹介いたします。
1) 日本語の特徴
日本語はSOV型と言われ、「私は(S)日本語を(O)勉強します(V)」のように、動詞や形容詞などの述語が一番最後に来ます。
韓国語、モンゴル語、オランダ語などもこの形で文が作られます。
対して、英語やスペイン語、中国語などは、「I(S) study(V) Japanese(O)」のように、主語のあとに動詞や形容詞などが来るSVO型と呼ばれます。
ただ、日本語は比較的語順が自由な言語で、「(私は)明日休みます」のように(S)が省略されたり、「カレーが好き、私は」のように語順が入れ替わることも珍しくありません。
また日本語では、基本的にひらがな、カタカナ、漢字の3種類の文字があり、さらにアルファベットを使う場合もあります。ひらがなだけでも、(「キャキュキョ」などの拗音や「が・ざ・だ」などの濁音、「ぱ」などの半濁音を除いて)46文字あり、漢字は小学校で学習するだけでも1000文字を超えます。
対して英語はアルファベット26文字で全てを表すことができ、ハングルも24文字で表せます。
したがって、これだけの文字数を使う言語は世界的にも珍しいといえます。
このあたりが、非漢字圏の学習者にとって、日本語が難しいと言われる理由の1つと言えるでしょう。
2)日本語能力試験JLPTとは
JLPTとは「日本語能力試験」と呼ばれる外国人の日本語レベルを測る検定試験のことです。
「日本語能力試験」では、①日本語の文字や語彙、文法についてどのくらい知っているか②その知識を利用してコミュニケーション上の課題を遂行できるかを測るために、「言語知識(文字・語彙・文法)」「読解」「聴解」という3つの要素からなる試験を実施しています。
N5レベルからN1までの5段階が設定されており、N1は最も難易度が高く平均合格率は30%程度となっています。1年間に2回実施されているJLPTは海外でも受験することが可能で、2019年の受験者は100万人以上にものぼりました。近年では「日本語能力試験」の受験目的が実力の測定だけでなく、就職、昇給・昇格、資格認定への活用など拡がっています。世界中で受験されている試験であるからこそ、日本語能力を証明するうえで大きな説得力を持つでしょう。
➡「日本語能力試験JLPT」
3) JLPTとBJTの違い
BJTとは、ビジネスにおける日本語でのコミュニケーション能力を測る「BJTビジネス日本語能力テスト」のことです。
その名の通り、ビジネスシーンにおいて必要とされる日本語の能力を測ることができます。
試験の結果は、0点から800点までの点数と J5〜J1+ までの6段階で評価されます。
BJTにおいて高得点を取るためには必然的に高い日本語能力が必要とされるため、基本的な日本語能力を持っている外国人が次のステップとして受験する場合が多いです。
4) JLPTの各レベルにおける日本語能力の目安
【N1レベル】
JLPTのN1レベルを取得していれば、幅広い場面で使われる日本語を理解することができるといわれています。
・読む
新聞の論説、評論など論理的にやや複雑な文章 や、抽象度の高い文章からその内容や構成を理解す る事が出来ます。
・聞く
幅広い場面において自然なスピードのまとまりのある会話やニュース、講義を聞いて、話の流れや内容を詳細に理解することができます。
【N2レベル】
日常的な場面で使われる日本語の理解に加えて、より幅広い場面で使われる日本語をある程度理解することができます。
・読む
わかりやすい新聞や雑誌の記事、評論文などの内容を理解することができます。
さらに話の流れや著者の表現意図などについても理解することができ、かなり高いレベルで日本語を読むことが可能といえるでしょう。
・聞く
聞く能力については、日常会話だけでなくニュースなどの内容から登場人物の関係を理解することもできます。
【N3レベル】
JLPTのN3レベルでは、日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができるとされています。
・読む
読む能力については日常的な話題についての理解だけでなく、新聞の見出しなどからおおまかな情報を読み取ることも可能なレベルです。少し難易度の高い内容の文章は、簡単な言い換えの表現などを与えることで内容を理解することができます。
・聞く
日常的な場面で、やや自然に近いスピードのまとまりのある会話を聞いて、話の具体的な内容を登場人物の関係などとあわせてほぼ理解する事が出来ます。
【N4レベル】
JLPTのN4レベルは、基本的な日本語を理解することができる程度のレベルといわれています。
・読む
基本的な語彙や感じを使って書かれた日常生活の中でも身近な話題の文章を、読んで理解する事が出来ます。
・聞く
日常的な場面でややゆっくりと話される会話であれば、内容がほぼ理解できます。
N5レベルと異なる部分は、定型的な文章でなくても読んで理解ができることと、短い会話でなくても内容がほぼ理解できるという点です。
【N5レベル】
JLPTのN5レベルは、基本的な日本語をある程度理解することができるほどのレベルだといわれています。
・読む
平仮名やカタカナ、日常生活で用いられる基本的な漢字で書かれた典型的な語句や文、文章を読んで理解する事が出来ます。
・聞く
身の回りなど日常生活の中でもよく出会う場面で、ゆっくり話される短い会話であれば、必要な情報を聞き取ることができます。
日本語の基本的な部分であれば理解できているということになりますが、聞く能力については会話のスピードによって聞き取れなくなることがありますので注意しましょう。
5) 外国人労働者を雇用している企業ができること
・語彙の一覧を作る
業務内容によっては、ネジ、スパナなどの道具の名前やホール、ラインなど場所の名前、シフト、夜勤、三交替などの働き方に関する学校では習わない言葉が使われる場合があります。職場で使っているいつもの日本語は、外国人にとって難しい単語のため、そのような語彙を一覧にしたり、簡単で分かりやすい日本語に書き換えたり工夫しましょう。
・ゆっくりと繰り返し話す
こちらの説明を外国人がきちんと理解したのか不安な時もあると思います。
理解していないと感じたときについしてしまうことは他の言い方に言い換えることですが、これはますます混乱させてしまう可能性があるので注意しましょう。残念ながら、日本人が言い換えてわかりやすくしたつもりの説明はかえって難しくなっていることが多いのです。
それよりも、一度した説明をゆっくりともう一度繰り返す方が正しい理解につながる可能性が高いです。
・「やさしい日本語」とは何かを知る
日本語教師養成コースのひとつに「やさしい日本語」があるほど、日本人が考える易しくて優しい日本語と、外国人が求めるそれとの間には勘違いや誤解があります。
この「やさしい日本語」について少し知っておくとお互いに楽になります。
いくつかポイントを紹介しましょう。
①1文を短くして、文の構造を簡単にする
1文の長さは24拍程度にしてください。長くても30拍を超えないようにしてください。平仮名1文字を1拍として数え、小さい「ゃ」「ゅ」「ょ」は数えません。
②難しい言葉を避け、簡単な言葉を使う。
日本語の語彙(単語)のレベルを調べる際に参考となるインターネットのサイトがあります。調べたい語彙を入力すると、レベルがわかります。
③曖昧な表現や二重否定表現は避ける
「大体」、「おそらく」などの曖昧な表現は控えましょう。曖昧なことを伝えたい時は、「~かもしれない」の方が伝わりやすいです。また、「危なくないことはない」のように二重で否定表現を使うと、聞いた人は混乱してしまいます。
④イラスト、写真などを使う
文字だけでなくイラストや写真を使用することで伝わりやすかったり、誤解を避けることができます。必要に応じて活用しましょう。
やさしい日本語については、文化庁のウェブサイトにガイドラインが掲載されています。
是非ご活用ください。
➡文化庁「在留支援のためのやさしい日本語ガイドラインほか」
6)まとめ
今回は、外国人が学んでいる日本語というもの、JLPTや「やさしい日本語」について解説しました。
自分たちの言語をもう一度見つめなおすことで、外国人にとっても日本人にとっても良い影響があるのでは無いでしょうか。