冷凍食品販売業の許可・届出

デリバリーやテイクアウトサービスを提供する店の増加に伴い、店内メニューを冷凍食品として製造・販売する飲食店が増えてきました。すでに食品の製造業で営業許可を取得していても、自身で製造した冷凍食品を販売するためには、新たに申請が必要となります。

今回は、冷凍食品の販売に必要な許可や届出についてご紹介していきます。

1) 冷凍食品の定義

冷凍食品には基準が定められているため、ただ冷凍しただけでは冷凍食品とは認められません。対象になる冷凍食品とは何か、定義について押さえておきましょう。


日本冷凍食品協会では以下の4点を明確にしています。


(ⅰ)前処理している

(ⅱ)急速冷結している

(ⅲ)適切に包装している

(ⅳ)品温を-18度以下で管理している


この4つの要素を満たす食品が、冷凍食品と言われています。


参考:一般社団法人日本冷凍食品協会「冷凍食品製造事業者向け HACCPに基づく衛生管理のための手引書

2) 必要となる許可や届出


2021年6月1日に施行された改正食品衛生法によって、冷凍食品の許可などを定める「食品衛生法」が再編され、次の許可・届出が必要となりました。


①冷凍食品製造業の営業許可

②複合型冷凍食品製造業の営業許可

③冷凍・冷蔵倉庫業の届出


また冷凍食品を自社で製造するのか、他社から仕入れて販売するのか等により、必要となる許可・届出が異なります。3つのパターンに分けて、詳しくご紹介していきます。


【パターン1】冷凍食品を製造し販売する場合の許可・届出


冷凍食品を自社で製造して販売する場合は、

(ⅰ)冷凍食品製造業の営業許可、または(ⅱ)複合型冷凍食品製造業の営業許可が必要となります。



(ⅰ)冷凍食品製造業の営業許可

冷凍食品製造業は、食品や添加物等の規格基準に定められた食品を、冷凍食品として製造する時に必要な営業許可です。端的に言えば、冷凍の惣菜を製造する際に必要となる許可です。惣菜とは、煮物や揚げ物、蒸し物などの単体から、米・パンと組み合わせた食品及び半加工品のことです。


(ⅱ)複合型冷凍食品製造業の営業許可

複合型冷凍食品製造業は、冷凍食品の製造に加えて食肉処理業、菓子製造業(菓子やパンなどの製造業)、水産製品製造業(魚介類やその卵を主原料にした食品の製造業)、麺類製造業に関する食品を製造したい場合の営業許可です。

以前は、これらの製造には追加の営業許可が必要でした。しかし、新たに「複合型冷凍食品製造業の許可」が作られたことで、追加許可の取得が不要になりました。

ただし追加許可を不要とするには、HACCPに基づく衛生管理を実施する場合に限ります。

とはいえ、原則すべての食品等事業者に「HACCPに沿った衛生管理」が求められているので、基本的に条件はクリアできるでしょう。HACCPについての詳細は下記に記載いたします。

掲載している費用は、東京都の費用であり自治体によって異なります。

また、厚生労働省のホームページに掲載されている食品衛生申請等システムでも申請可能です。

参考:「東京都食品衛生関係許可手数料


また(ⅰ)、(ⅱ)の営業許可を得るには、3つの要素を満たす必要があります。


(A)食品衛生責任者の資格

(B)基準に沿った施設の整備

(C)HACCPに基づいた衛生管理


(A)食品衛生責任者の資格

食品衛生法に定める営業許可を受けるためには、食品衛生責任者の資格が必要になります。

食品衛生責任者は都道府県知事等が行う又は認めた講習会を定期的に受講し、営業者の指示に従い衛生管理に勤める必要があります。そして食品衛生責任者になるためには、計6時間程度の養成講習会を受講することで、資格を取得できます。


調理師、製菓衛生士、栄養士、船舶料理士、食鳥処理衛生管理者、と畜場法に規定する衛生管理責任者もしくは作業衛生責任者、船舶料理士、食品衛生管理者(注1)の有資格者は、保健所に届け出ることで食品衛生責任者の資格を取得することができます。


(注1)医師・獣医師・歯科医師・薬剤師または、学校教育法に基づく大学で、医学・歯学・薬学・獣医学・畜産学・水産学・農芸化学の課程を修めて卒業した者等。


参考:一般社団法人「東京都食品衛生協会


(B)基準に沿った施設の整備

営業施設の構造、食品取扱設備、給水・排水及び汚物処理など、業種ごとに施設基準が設けられています。こちらに詳しく掲載されていますので、お確かめください。

東京都保険医療局・保健所新たに食品に関する営業を始められる皆さんへー食品関係営業許可申請の手引ー


(C)HACCPに基づいた衛生管理

衛生管理計画の設定や製品に対する工程フロー図、管理状況の記録など「HACCPに沿った衛生管理」の実施が義務付けられています。

冷凍食品事業者向けの手引書がありますので、そちらをご参考ください。

➡一般社団法人 日本冷凍食品協会「冷凍食品製造事業者向けHACCPに基づく衛生管理のための手引書(第2弾)

【パターン2】冷凍食品を他社から仕入れて販売する場合の許可


(ⅲ)冷凍・冷蔵倉庫業の届出

製造は行わず冷凍食品の販売や保管・輸送だけを行う営業形態の場合は、営業許可の取得ではなく「届出の提出」のみ必要となります。届出には施設整備や更新手続きなど、許可申請時に必要となる書類等は不要です。


【パターン3】既製品の冷凍食品を小分けにして販売する場合の許可

既製品の冷凍食品を小分けにして容器包装に入れ、又は容器包装で包んで販売する場合、食品の小分け業の許可が必要となります。

では、冷凍食品を通販で販売するには、新たに許可を取得する必要があるのでしょうか。

答えは不要です。これまでご紹介した場合と同じで、冷凍食品を製造する場合は(ⅰ)冷凍食品製造業の営業許可または(ⅱ)複合型冷凍食品製造業の営業許可が必要です。そして、製造はせずに冷凍食品を仕入れて販売する際には、(ⅲ)冷凍・冷蔵倉庫業の届出が必須となります。

3) まとめ

以上、冷凍食品の販売に必要な許可や届出についてご紹介しました。販売内容や仕入れ方法によって異なりますので、各自治体の保健所に相談しながら、準備を進めると良いでしょう。