一般酒類小売業免許

酒類の販売業をしようとする場合には、酒税法の規定に基づき「酒類販売業免許」を受ける必要があります。「酒類販売免許」はその販売形態によって必要な免許が異なりますが、今回は消費者や酒場・料理店等の酒類を取り扱う接客業者等に対して、酒類を販売することのできる「一般酒類小売業免許」についてご紹介いたします。

1)一般酒類小売業免許」とは

酒類の販売業をしようとする場合には、酒税法の規定に基づき「酒類販売業免許」を受ける必要があります。販売場ごとに、その販売場の所在地の所轄税務署長から酒類販売業免許を受ける必要があります。そのため、本店で販売業免許を受けている場合であっても、支店で酒類の販売業を行おうとする場合には、支店の所在地の所轄税務署長から新たに販売業免許を受ける必要があります。

  

そして、「酒類販売業免許」はその販売形態に応じて「酒類小売業免許」と「酒類卸売業免許」に区分されます。

参考:国税庁「種類の販売業免許の区分及び種類とその意義


今回紹介する「一般酒類小売業免許」とは、消費者または酒場・料理店等の酒類を取り扱う接客業者等に対して、酒類を販売することのできる許可です。この「一般酒類小売業免許」は原則として、全ての品目の酒類を小売することができます。

ただし、他の酒類販売業者に対しての酒類販売はできません。また、酒類を仕入れる際は、酒類の卸売をすることが可能な者(酒類販売卸売業免許の取得業者や酒類製造業者)からの購入が必要となります。



◎「一般酒類小売業免許」が必要な場合

・スーパーやコンビニエンスストア等の店舗にて酒類を販売する場合

・飲食店が飲料店の飲料として提供するための酒類として販売する場合

・インターネットを利用して、一部の地域のみ(1つの都道府県内)に販売する場合

・飲食店が近隣に酒類もデリバリーする場合

 など

2) 一般酒類小売業免許」の要件

「一般酒類小売業免許」を取得するには、申請者、申請者の法定代理人、申請法人の役員、申請販売売り場の支配人(以下、申請者等という。)及び申請販売場が以下の各要件を満たしていることが必要です。この要件は大きく分けて4つの区分があります。

では要件を1つずつ見ていきましょう。


(ⅰ)人的要件


①酒類等の製造免許もしくは販売業免許、または、アルコール事業法の許可の取り消し処分を受けた者の場合、取り消し処分を受けた日から3年を経過していること


②酒類等の製造免許もしくは販売業免許、または、アルコール事業法の許可の取り消し処分を受けたことがある法人の、その取消原因があった日以前1年内にその法人の業務を執行する役員であった者の場合には、取り消し処分を受けた日tから3年を経過していること


③申請者が申請前2年内において国税又は地方税の滞納処分を受けていないこと


④申請者が国税又は地方税に関する法令により罰金刑や通告処分を受けた場合には、その通告処分を受けてから3年を経過していること


⑤申請者が未成年飲酒禁止法や風俗営業等適正化法、刑法等により、罰金刑に処せられた場合、その執行を終えた日から3年を経過していること


⑥申請者が禁錮以上の刑に処せられた場合、その執行を終えた日から3年を刑かしていること


(ⅱ)場所的要因


①お酒の販売場が、製造場や他の販売場、料理店等と同一の場所でないこと


②販売場の区画や販売従事者、レジなどが他の営業と明確に区分されていること

※例えば狭い店舗内の一部を借り、陳列棚を販売場とする場合には、明確に区分されていると認められません。


(ⅲ)経営基礎的要件


①免許の申請者が破産者で復権を得ていない場合に該当しない


②経営の基礎が薄弱でないと認められること


具体的には次の(A)~(I)で判断します。


(A)国税又は地方税を滞納していない

(B)申請前1年以内に銀行取消停止処分を受けていない

(C)最終事業年度における確定した決算に基づく賃貸対照表の繰越損失が資本等の額を上回っていない

※資本等の額=(資本金+資本剰余金+利益剰余金)-繰越利益剰余金で計算されます。

(D)最終事業年度以前3事業年度において、資本等の額の20%を超える額の欠損を生じていない

(E)酒税に関係のある法令の違反による通告処分等を受けていない

(F)販売場の申請場所への設置が、建築基準法や都市計画法等違反による店舗の除却を命じられていない

(G)酒類の適正な販売管理体制の構築が見込まれること

(H)適正に酒類の小売業を経営するに十分な知識及び能力を有する※1と認められる者である

(I)資金や施設及び設備を有している、又は必要な資金を有し免許の付与までに施設及び設備を有することが確実と認められること


※1 十分な知識及び能力を有すると認められる者について

➡〇酒類の製造業又は販売業の業務に引き続き3年以上直接従事した者、調味食品等の販売業を3年   以上継続して経営している者、又はこれらの業務に従事した機関が相互に通算して3年以上である者を指す。なお、これらの経験がない場合には、その他の経営経験に加えて

  「酒類販売管理研修(17頁参照)の受講の有無等から実質的に審査されることとなる。

  

 〇酒類の製造業や販売業の経営者として業務に従事するなど、酒類に関する事業及び酒類業界の   実情に十分精通していると認められる者。


(ⅳ)需給調整要件


酒税の保全上、酒類の需給の均衡を維持する必要があるため、以下のような場合には、酒類販売業の免許をうけることができません。


①免許の申請者が、設立の趣旨からみて、販売先が原則としてその構成員に特定されている法人または団体でないこと

②免許の申請者が、酒場、旅館、料理店等酒類を取り扱う接客業者でないこと


※接客業者であっても、国税局長が酒類販売業の免許を付与しても支障がないと認めた場合には、免許を受けることができます。

例えば、同一の営業主体が飲食店と酒販店を兼業する場合には、飲食店部分と酒類販売店部分の場所的区分や、飲用の酒類と酒販用の酒類の在庫・仕入れ・売上管理などの区分を明確化します。こうすることにより、酒販店部分に関して酒類販売業の免許を取得し営業することが可能となります。

3) 申請に必要な書類

申請は、提出書類を全て揃えたうえでおこないましょう。


①酒類販売業免許申請書

②酒類販売業免許の免許要件誓約書

③申請者の履歴書 ※申請者が法人の場合には、監査役を含めた役員全員の職歴を記載

④定款の写し ※申請者が法人の場合のみ提出

⑤地方税の納税証明書 ※法人の場合は本店所在地、個人の場合は住所地の属する都道府県            及び市区町村が発行する納税証明書を添付してください。

⑥契約書等の写し 

⑦最終事業年度以前3事業年度の財務諸表 ※申請者が個人の場合には収支計算書等を添付

⑧土地及び建物の登記事項証明書 ※全部事項証明書に限る

⑨一般酒類小売業免許申請書チェック表 

※③及び④の添付書類については、申請販売場の所在地を管轄する税務署管内に既に免許を受けた酒類販売場を有している場合には、添付を省略できます。

記載例につきましては、こちらのファイルの22頁をご覧ください。


【提出先】

〇販売場の所在地を所轄する税務署

 ➡国税庁のHP、税務署の所在地をご確認いただけます。

〇e-Taxソフトを利用した電子データ型式

 ➡e-Taxソフトのマニュアルはこちら

4) 一般酒類小売業免許の申請手続きの流れ


①申請書等の提出

「酒類販売業免許申請書」及び必要な添付書類を作成し、

販売場の所在地の所轄税務署又はインターネット上で提出します。

②審査

税務署において審査が行われます。

申請書類の審査には、相当の期間(標準2ヶ月)がかかります。

また、必要に応じて、来署を求める場合や、現地確認を行う場合があります。

③免許付与等の通知

「一般酒類小売業免許」が付与される場合にも、されない場合にも書面にて通知されます。

なお、免許付与に際して、登録免許税(1件につき3万円)を納付する必要があります。

④酒類の販売開始

5) 通信販売をしたい場合

酒類の通信販売を行おうとする場合には、新たに「通信販売酒類小売業免許」を受ける必要があります。「通信販売」とは、2都道府県以上の広範な地域の消費者等を対象として、インターネットやカタログを使って販売することをいいます。ただし、県をまたがる(2都道府県以上)電話やインターネット等による受注販売であっても、一般的に自己の販売場の近隣エリア(商圏)であれば、「一般酒類小売業免許」の対象となります。


もし、「一般酒類小売業免許」を受けた販売場で通信販売を行おうとする場合には、販売方法等の条件を変更する手続きが必要となります。その場合は、新たな免許申請ではなく「酒類販売業免許の条件緩和申出書」により手続きを行ってください。


条件緩和の申出と新規申請の最も大きな違いは、「決算状況」が審査の対象になっていないということです。例えば、新規申請時には直近の決算が債務超過でないことを求められますが、条件緩和の申請時では、たとえ直近の決算が債務超過であっても、その他の条件を満たせば申出が認められます。


ただし、2年以上引き続きお酒の販売業を休業していないことという条件があります。しばらくお酒の販売業を営んでおらず、新たに営業を再開する際の条件緩和申出には注意が必要です。

酒類販売業免許の条件緩和については、こちらからご確認ください。

6) まとめ

今回は、原則すべての品目の酒類を販売することができる「一般酒類小売業免許」についてご紹介しました。「一般酒類小売業免許」は酒類の小売業をはじめる際に、最初に取得するであろう一般的な免許となります。それでも、税務署の審査や書類等の作成や煩雑な手続きがありますので、今回紹介したポイントを押さえておきましょう。スムーズに申請を行うためにも、迷われた際には当法人にお気軽にお問い合わせください。


【問い合わせリンク】

info@visaoffice.jp

参考:税務署「一般酒類小売業免許申請の手引