所得税について

1) 所得税とは

日本の税金は、国に支払う「国税」と都道府県・市町村に支払う「地方税」に区分されます。


所得税は毎年1月1日から12月31日までの1年間の全ての所得に対してかかる税金であり、国税にあたります。所得のある人は所得税を支払う義務があります。

2)源泉徴収の仕組みについて

所得税は実際に1年間で得た所得を自己申告して、納税することになりますが、課税対象者全員が確定申告をすると、煩雑であり、申告漏れなどの事態も想定されることから、会社が代わりに給与から所得税分を差し引いて納付します。

これが、「源泉徴収制度」の仕組みであり、基本的には全ての事業主に源泉徴収を行う義務があります。


「所得税」は1年間の所得に応じて本人が支払う税金ですが、「源泉所得税」とは企業が従業員の源泉から徴収し、代わりに納付する所得税のことです。


源泉徴収の対象とされている場合は、給与から所得税が差し引かれるため、確定申告を行う必要はありません。


所得税は、本来であれば年間所得に対して課税される税金であるため、源泉所得税はあくまで仮の納税であり、「年末調整」をしなければなりません。


年末調整は、納税義務者の1年間の所得を確定し、所得税を再計算する手続きのことをいいます。再計算によって、徴収額の多寡が判明すれば、返金または追加で課税を行います。


なお、年末調整の対象となるのは、国内居住期間が1年を超えている者です。

日本に在住し雇用されているが年末時の滞在期間が1年に満たない外国籍の従業員や海外支店に出向して1年以上勤務している人は対象にはなりません。

3)所得税額の算式

所得税は、1年間の所得から全ての所得控除を差し引いた残りの課税所得に税率を適用し、計算します。


所得税額=(所得金額-所得控除額)×税率-税額控除額



【所得税の税率】


税率は、所得金額に応じて段階的に変わる超過累進税率になっており、所得が多くなるほど税率が高くなります。

(出典:国税庁「所得税の税率」)

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2015/taxanswer/shotoku/2260.htm



【所得控除】

所得控除とは、所得税の額を算出する際に、一定の要件にあたることを条件に、その人の所得から一定の金額を差し引くことです。


所得控除には、下記のようなものがあります。


雑損控除、医療控除、社会保険料控除、障害者控除、基礎控除、配偶者控除、扶養控除、寡婦(寡夫)控除、ひとり親控除、勤労学生控除 など


以下では、耳にすることが多い配偶者控除と扶養控除について紹介します。


配偶者控除:年収が一定額以下の配偶者がいる場合に扶養する側の所得税が減額される制度です。配偶者控除の適用を受けるには、扶養者本人のその年の合計所得金額が1000万円以下である必要があります。


配偶者控除の対象となる配偶者はその年の12月31日現在で下記要件を全て満たす場合に限られます。


①民法上、配偶者であること。(内縁関係は該当しない)

②納税者と生計を一にしていること

③配偶者の年間合計所得金額が48万円以下であること。

④青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと、または白色申告者の事業専従者ではないこと。



扶養控除:いくつかの要件を満たす親族を養っている場合に、所得金額から一定の所得控除を受けられる制度です。


扶養控除の対象となる親族は、その年の12月31日現在で下記要件を全て満たす必要があります。


①配偶者以外の親族であること

②16歳以上であること

③同一生計であること

④合計所得金額が48万円以下であること、ただしパートやアルバイト等の給与収入のみの場合は、合計所得金額が103万円以下であること

⑤青色申告者の事業専従者として給与所得を得ていないこと



【税額控除】

税額控除とは、所得税額から一定の金額を差し引くことです。


所得控除は税金が課される所得から一定額を差し引くのに対し、税額控除は税額から直接差し引ける控除なので、税額控除の方が節税効果は大きいです。


税額控除には、下記のようなものがあります。


配当控除、外国税額控除、住宅借入金等特別控除、住宅特定改修特別税額控除 など


4) 居住形態による区分

所得税法では、納税義務者を「居住者」「非居住者」に区分し、さらに「居住者」を「永住者」と「非永住者」に区分して、課税される所得の範囲に違いを設けています。

上記の居住形態による区分に応じて、課税範囲が異なります。 

上記の居住形態による区分に応じて、源泉所得税の徴収方法も異なります。

5) 外国人に適用される控除

外国人就労者が「居住者」であれば、基本的に日本人と同様に、所得控除や税額控除も対象となり、各控除の要件を満たしていることを条件に、全ての控除を受けることができます。


一方で、非居住者は雑損控除、寄付金控除、基礎控除の3つしか受けることはできません。

①外国税額控除について


外国税額控除とは、[居住者」が母国で得た所得に対し所得税を支払った場合に、その旨を日本で申告すれば、母国で支払い済みの所得税額を日本の所得税から控除してもらえる制度です。


これは、海外所得に所得税を納付する外国人は、日本と母国の両方に所得税を支払うことになるのかという「二重納税」の問題に対処するため、2国間で締結された租税条約に基づく制度です。


現在、租税条約(二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止を主たる内容とする条約)は150の国と締結されています。


(出典:財務省「租税条約に関する資料」 )

https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/international/tax_convention/index.htm


控除される税額は国によって異なるため、きちんと確認しましょう。

②短期滞在者免除


「非居住者」についても、租税条約を締結している国の出身であれば、短期滞在者免税の対象になることがあります。


短期滞在者免税は、短期滞在中にいちいち納税を行うことになれば、事務手続きが煩雑であることから、一定の条件を満たすことを条件に、短期滞在国での所得税の納税を免除する制度です。


短期滞在者免税の要件は各租税条約によって異なりますが、おおむね下記のような要件です。


①短期滞在者免税の規定が条約に定められていること

②183日の滞在期間を超えないこと

③相手国の雇用主から給与が支払われていること

④日本の雇用主が給与を負担していないこと

6)まとめ

今回は所得税についてご紹介しました。


納税の手続きは煩雑であり、理解が難しいため、企業側が丁寧に説明することが大切です。

控除に関する諸制度についてもきちんと説明し、不安を解消してあげましょう。