外国人学生をインタンシップとして受け入れる際にはどの在留資格を取得すればいい?
外国人学生をインタンシップとして受け入れる際にはどの在留資格を取得すればいい?
今回は外国人学生をインターンシップとして受け入れる際に、知っておきたい在留資格についてご紹介します。インターンシップを行う方の状況やインターンによる報酬の有無によって、取得しなければならない在留資格や必要な手続きが異なります。
ところで、インターンシップとは、日本では一般的に「学生が在学中に自らの専攻、将来のキャリアに関連した就業体験を行うこと」として捉えられています。インターン生を受け入れる場合には単なる労働力の確保として受け入れるのではなく、十分な指導体制を整えて学生はもちろん、学生を送り出す大学や受け入れる企業にとっても有意義になるよう努めましょう。
まずは海外から外国人学生を受け入れる場合に必要となる在留資格についてご紹介します。
〈特定活動(9号)の場合〉
外国の大学の学生が教育課程の一環として、大学と日本の公私の機関との間の契約に基づき当該機関から報酬を受けて従事する場合は、「特定活動(9号)」を取得することとなります。学位が授与される教育課程であれば、短期大学や大学院も認められますが通信教育に在籍している学生は認められません。期間は1年を超えない期間で、かつ、通算して大学の修業年限の2分の1を超えない期間内に限られます。また、学生であっても労働者であるため労働基準法や地域毎の最低賃金等、日本の法令を遵守する必要があります。
労働関係法規の適用については、ページ下部に記載されている「4.外国人学生を受け入れる際の注意点」で詳しくご紹介しております。
出入国在留管理庁が提示している特定活動9号のガイドラインがありますので、ご一読ください。
〈特定活動(12号)の場合〉
特定活動12号は、「サマージョブ」とも呼ばれていますが、夏休みに限らず授業が行われない長期休暇であれば認められます。先ほどご紹介した特定活動9号と異なる点は、単位取得がない点と、在留期間が最長で3か月という点です。
〈文化活動の場合〉
海外の大学に在籍している方が日本企業において報酬が発生しないインターンシップを、90日以上行う場合には、在留資格「文化活動」を取得する必要があります。
インターンシップを行う予定の本邦の企業等が、在留資格認定証明書交付申請を行う必要があります。要件は特定技能(9号)と報酬を受けとらないという点以外は同じです。
〈短期滞在の場合〉
海外の大学に在籍していて、報酬を伴わないインターンシップを90日以下行う場合には在留資格「短期滞在」を取得します。在留資格「短期滞在」を取得するには、これまで紹介してきた3つの在留資格とは異なり、事前に在留資格認定証明書交付申請が不要です。ですが、査証免除対象国・地域以外の国籍・地域出身の方については、来日前に査証の申請が必要です。査証申請についての詳細は、外務省又は査証申請を行う予定の在外公館にお問い合わせください。
〈報酬が発生するインターンシップに従事する場合〉
在留資格「留学」、特定活動(継続就職活動)又は特定活動(就職内定者)をもって本邦に在留している方が、報酬を伴うインターンシップを行う場合には地方出入国在留管理局で事前に資格外活動許可を受ける必要があります。手続きはインターンシップを行う時間によって次のように異なります。
(1)インターンシップに従事する時間が1週につき28時間(在籍する教育機関の学則により定める長期休業期間中にあっては1日8時間。)以内の場合
この場合には、事前に最寄りの地方出入国在留管理局において包括的な資格外活動許可を受ける必要があります。インターンシップを行う時点で既に包括的な資格外活動許可を取得している場合には、新たに許可を受ける必要はありません。
(2)インターンシップに従事する時間が長期休業期間以外で1週につき28時間を超える場合
(1)の資格外活動許可とは別に「1週につき28時間を超える資格外活動許可」を個別に受ける必要があります。
インターンシップを目的とした個別の資格外活動許可について、在留資格「留学」をもって本邦に在留している方については、原則として
・大学(短期大学を除く)に在籍し、インターンシップを行う年度末で修業年度を終える方で、かつ、卒業に必要な単位をほぼ取得している方
・大学院に在籍し、インターンシップを行う年度末で修業年度を終える方が対象となりますが、これらの方以外であっても、単位を取得するために必要な実習等、専攻科目と密接な関係がある場合等には、当該個別の資格外活動許可を受けることができます。
また、在留資格「特定活動(継続就職活動)又は(就職内定者)」をもって在留する方も、当該個別の資格外活動許可の対象となります。
〈インターンシップで報酬を受けない場合〉
在留資格「留学」、特定活動(継続就職活動)又は特定活動(就職内定者)をもって本邦に在留している方が、報酬を伴わないインターンシップを行う場合には、事前に地方出入国在留管理局から資格外活動許可を受ける必要はありません。
資格外活動の取得方法等についてはこちらのページで詳しくご紹介しております。併せてお読みください。
➡「資格外活動許可について」
引用:出入国在留管理庁「インターンシップをご希望のみなさまへ」
出入国在留管理庁「インターンシップに関する在留資格等」
海外の学生を受け入れることで、社内の活性化や国際化を促すきっかけとなります。日本と異なる文化や価値観を持った学生と仕事をすることで、今までとは違う観点から物事を見られるようになるかもしれません。また、指導にあたる社員のマネージメント力の向上にも繋がり、国際感覚を持った人材と出会えることができるでしょう。インターンシップ中にぜひ一緒に働きたいと思った方が見つかれば、正社員として雇用する機会を設けることができます。ですが、日本人にとっては当たり前のマナーが海外の方にとっては当たり前でない場合があります。お互いの文化や価値観が異なることを理解し、相手の文化を尊重することが重要です。
最後に外国人学生を受け入れる際の注意点を紹介します。
・インターンシップの受け入れ、指導体制を整えましょう
先ほどもお伝えしましたが、単なる労働力の確保のためにならないように指導体制を整える必要があります。特に特定活動(9号)では、指導員の選任・過去5年以内に出入国・労働に関する法令の規定に違反していないこと・インターンシップの実施状況や評価結果の報告書の作成などがガイドラインに記載されています。細かい点まで求められますので、ガイドラインを確認した上で受け入れ態勢を整えるようにしましょう。
・インターン生には労働関係法規が適用される場合があります。
インターンシップによって修業する学生が「労働者」(労働基準法9条)に該当する場合には、労働関係法規が適用されます。
労働基準法9条で「労働者」とは、‘職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。) に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。”と規定されています。またインターンシップにおいての実習が、見学や体験的なものではなく直接生産活動に従事し、事業場と学生の間に使用従属関係が認められる場合には、当該学生は労働者に該当するものと考えられる、とされています。(旧労働省平成9年9月18日基発第636号)
したがって、企業は実施するインターンがどのような内容であるかを把握したうえで、インターン生が「労働者」に該当するか否かを判断する必要があります。
もし「労働者」に該当するのであれば、労働基準法や最低賃金法等の労働基準関係法令が適用され、実習中の事故に関しては労災保険法の適用がされます。しかし「労働者」に該当しない場合でも労災保険の適用の有無にかかわらず、企業が学生に対して安全配慮義務を負う必要があり、企業内での事故に対して過失が認められれば損害賠償の責任が発生します。
参考:経済産業省「成長する企業のためのインターンシップ活用ガイド 活用編」
以上、外国人学生のインターンシップ受け入れについてご紹介しました。インターンシップは、企業にとっても学生にとっても多くの利点があります。ですが、インターンシップをスムーズに進めていくには十分な指導体制、労働法の遵守、安全管理の徹底が必要不可欠です。学生にとっても企業にとっても実りあるものになるよう努めましょう。
外国人学生向けではありませんが、経済産業省がインターンシップ活用ガイドを作成しています。併せてご確認ください。