介護業界における
外国人の受け入れについて
ー各在留資格ごとの要件や雇用までの流れを解説ー
1) 雇用できる在留資格と雇用までの流れ
高齢化が進み介護を求める人が増えている一方で、介護業界では人手不足が深刻化しています。そこで政府は外国人受け入れの在留資格を拡大させ、介護業界で働く外国人は増加傾向にあります。外国人材受け入れの仕組みは現在4制度あり、在留資格の種類と受け入れまでの流れについて、ご紹介していきます。
①EPA(経済連携協定)
EPAとは、日本と相手国の経済活動の連携強化を図るもので、インドネシア、フィリピン、ベトナムの3カ国から外国人を受け入れています。
【国ごとの要件と受け入れまでの流れ】
※1 日本語能力試験N2以上の候補者は日本語研修免除
※2 また、一定期間内に日本語能力試験N3若しくはN4を取得した候補者は日本語研修を免除
※3 帰国後も、在留資格「短期滞在」で再度入国し国家試験を受験することが可能
参考:厚生労働省「経済連携協定(EPA)に基づく外国人看護師・介護福祉士候補者の受入れ概要」
【特徴】
母国での学習経験や資格を持つ人を雇用することができる
介護福祉士を取得すれば永続的な就労が可能
外国人応募者と介護事業所のマッチングはJICWELS(国際厚生事業団)が唯一の受け入れ調整機関である
②在留資格「介護」
日本の介護福祉士養成校に通う外国人留学生は、 卒業して介護福祉士を取得すると、「介護」という在留資格を取得できます。
介護福祉士養成施設の留学生が介護福祉士の資格を取得しても、日本で介護業務に就くことができなかったのが、平成29年に入管法が改正されて可能となりました。
【養成校の入学要件】
日本語能力試験でN2以上に合格、もしくは日本語教育機関で6か月以上学習し日本語試験でN2相当以上と確認できる/等 ※学校によって異なります。
【受け入れまでの流れ】
※ 他の在留資格(EPA介護候補者等)で滞在中に介護福祉士試験に合格した場合も、在留資格「介護」に移行可能。
参考:厚生労働省「在留資格【介護】の概要」
【特徴】
介護福祉資格を持っているため専門人材として期待ができる
在留期間は繰り返し更新できるので、本人が希望する限り永続的に働くことが可能
介護福祉養成校の規則にもよるが、養成校に通っている時からアルバイトとして雇用することもできる。
受入調整機関がないため、事業者が自主的に介護福祉士養成校と連携するといった採用活動を行わなければならない。
在留資格手続きについてはこちらをご確認ください。
③技能実習
外国人技能実習制度は、日本国内において技能や技術、知識を身に着けた外国人が発展途上国である母国で経済発展に寄与できるようにサポートするのが最終目的となっています。
技能実習生は入国後、日本語と介護の基礎等に関する講習を受けてから、介護事業所で雇用します。働きながら介護技能の修得(技能実習)をするため事業所と雇用関係を結びます。
【受け入れにあたっての要件】
コミュニケーション能力
入国時はN3程度が望ましいが、N4程度が要件
2年目はN3程度が要件だが、一定の条件を満たす場合は当分の間N4であっても2号修了時(入国後3年間)まで在留可能
適切な実習実施者の対象範囲の設定
介護の業務が現に行われている事業所(介護福祉国家試験の実務経験対象施設)を対象とする。
但し、技能実習生の人権擁護や適切な在留管理の観点から、訪問系サービスは対象としない。
また、経営が一定程度安定している事業所として、設立後3年を経過している事業所が対象である。
適切な実習体制の確保
*受け入れ人数枠
受入れることができる技能実習生は、事業所単位で、介護等を主たる業務として行う常勤職員(常 勤介護職員)の総数に応じて設定(常勤介護職員の総数が上限)。
*技能実習指導員の要件 技能実習生5名につき1名以上選任。
そのうち1名以上は介護福祉士等。
*入国時の講習
専門用語や介護の基礎的な事項を学ぶ
*夜勤業務等
利用者の安全の確保等のために必要な措置を講じる。
(※)具体的には、技能実習制度の趣旨に照らし、技能実習生以外の介護職員を同時に配置することが求められるほか、 業界ガイドラインにおいても技能実習生以外の介護職員と技能実習生の複数名で業務を行う旨を規定。また、夜勤業務等を行うのは2年目以降の技能実習生に限定する等の努力義務を業界ガイドラインに規定。
*監理団体による監理の徹底
監理団体の役職員に5年以上の実務経験を有する介護福祉士等を配置
【技能実習生に関する要件】
〈技能実習制度本体(主な要件)〉
18歳以上
制度の趣旨を理解し、技能実習を行おうとする者
帰国後、修得した技能等を要する業務に従事することが予定されていること
企業単独型技能実習(日本の企業等が海外の現地法人、合弁企業や取引先企業の職員を受け入れて技能実習を実施する方法)の場合にあっては、申請者の外国にある事業所又は申請者の密接な関係を有する外国の機関の事業所の常勤の職員であり、かつ、当該事業所から転勤し、又は出向する者であること。
団体監理型技能実習(非営利の監理団体(事業協同組合、商工会等)が技能実習生を受入れ、傘下の企業等で技能実習を実施する方法)の場合にあっては、従事しようとする業務と同種の業務※に外国において従事した経験を有すること又は技能実習に従事することを必要とする特別な事情があること。
同じ技能実習の段階に係る技能実習を過去に行ったことがないこと。
※同等業務従事経験(いわゆる職歴要件)については例えば、以下の者が該当する。
・ 外国における高齢者若しくは障害者の介護施設等において、
高齢者又は障害者の日常生活上の世話、 機能訓練又は療養上の世話等に従事した経験を有する者
・ 外国における看護課程を修了した者又は看護師資格を有する者
・ 外国政府による介護士認定等を受けた者
〈介護職種の要件〉
技能実習制度本体の要件に加えて、以下の要件を満たす必要がある
日本語能力要件
*第1号技能実習 (1年目)
日本語能力試験のN4 に合格している者、その他これと同等以上の能力を有すると認められる者で あること。
*第2号技能実習 (2年目)
日本語能力試験のN3に合格している者、その他これと同等以上の能力を有すると認められる者であること。
【受け入れまでの流れ】
【特徴】
最長5年の雇用だが、技能実習期間中に介護福祉士の国家資格を取得すれば、在留資格「介護」に変更でき日本で永続的に働くことができる。また、3年目まで修了した技能実習生は「特定技能1号」に必要な試験が免除される。
監理団体による講習や調整の支援があり、受け入れにあたっては監理団体が実習生を受け入れ講習を行い、実習先となる介護事業所との調整を担う。
参考:厚生労働省「技能実習「介護」における雇用要件について」
④在留資格「特定技能1号」
特定技能制度は、国内人材を確保することが困難な状況にある産業分野において、一定の専門性・技能を有する外国人を受け入れることを目的とする制度です。
特定技能1号は、平成31年4月から始まった、就労目的で外国人材を受け入れるための在留資格です。
【要件】
国内外で実施される
・技能試験(➀介護技能評価試験)並びに
・日本語試験(➁国際交流基金日本語基礎テスト又は日本語能力試験N4以上
及び➂介護日本語評価試験)に合格すること
以下の方は在留資格の取得にあたり、技能試験と日本語能力試験が免除されます
・介護職種の第2号技能実習を良好に修了した方
・介護福祉士養成施設を修了した方
・EPA介護福祉士候補者としての在留期間満了(4年間)の方
【受け入れまでの流れ】
参考:厚生労働省「介護分野における特定技能外国人の受入れについて」
⑤「身分または地位にもとづく在留資格」
「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」の4つの在留資格は、有効期限が無限のうえに活動の制限もありません。そのため日本人と同じように雇用することが可能です。
以上、4つの制度を大まかに比較したのが以下の表です。詳しくは、こちらからご確認ください。
2)外国人雇用における注意点
宗教や文化の違い等を確認し、尊重しましょう。
外国人採用後におけるトラブルとその対策についてはこちらのページにてご紹介しております。併せて お読みください。
生活面を含めた幅広い支援を行いましょう。
住居の支援、行政手続きや住まいの契約手続き等の支援は、大半の施設で行われており、これらは生活 の基盤を整える基本的な支援と言えます。コミュニケーション円滑化のための支援や、メンタルヘルスケ アなど幅広い支援を欠かさないようにしましょう。
利用者の不安を招かないようにしましょう。
介護は対人サービスであり、日本語によるコミュニケーションが必要不可欠です。利用者の不安を招かないよう、必要レベルの日本語や基礎的な専門用語など介護現場特有の言葉なども覚えてもらいましょう。
3)まとめ
今回は介護業界における外国人雇用についてご紹介しました。
少子高齢化の進展が進む中、介護業界の人手不足は深刻な問題となっています。4つの受け入れ制度を活用して、外国人を雇用するという選択肢があるということも視野に入れてみてはいかがでしょうか。