帰化申請と永住者の違いとは
ー帰化申請のメリット・デメリットと併せてご紹介ー
注意することとはー
1) 帰化申請とは
帰化とは、「その国の国籍を有しない者(外国人)からの国籍の取得を希望する旨の意思表示に対して、国家が許可を与えることによって、その国の国籍を与える制度」です。(国籍法第4条)
そして帰化申請とは、外国人が日本国籍を取得する手続きのことです。日本では二重国籍は認められていないため、それまでの外国籍を失うことになります。さらに元の国籍に戻したいと思っても、国籍を取り直すことが大変難しい国もありますので、帰化には十分な検討が必要です。
2) 永住者との違いについて
「帰化」と間違われやすいのが「永住者(永住権)」です。
「帰化」は日本国籍を取得することを指し、外国籍ではなくなる、つまり日本人になるということです。
一方、在留資格「永住者」では国籍は変えずに「外国人」として日本に在留し続けるものです。
帰化の申請・承認は永住権より更にハードルが高くなります。
「永住者(永住権)」についてはこちらのページで詳しくご紹介しております。是非ご確認ください。
➡「在留資格「永住者」とは」
3) 帰化の要件について
帰化の一般的な要件には次のようなものがあります。また、これらの要件を満たしていても必ず許可されるとは限りません。
1.住所要件
引き続き5年以上日本に住み続けている必要があります。住所は適法なものでなければなりません。なお、住んでいる期間は適法な在留資格を有してなければなりません。
以下に該当する方は期間が緩和されます。
例)
日本生まれの方:3年
日本人の配偶者で婚姻から3年未満:3年
日本人の配偶者で婚姻から3年以上:1年
日本人の子(養子を除く):期間の制限なし
2.能力要件
18歳以上で本国の法制でも成人に達していることが必要です。
3.素行要件
素行が善良であることが必要です。素行が善良であるかどうかは、犯罪歴の有無・態様・納税状況・社会への迷惑の有無等を総合的に考慮し、社会通念に照らして判断します。
4.生計要件
収入に困窮することなく日本で生活していけることが必要です。生計を一つにする親族単位で判断されますので、本人が無収入であっても配偶者その他の親族の資産・技能で生活できればこの条件を満たすこととなります。
5.重国籍防止要件
無国籍であるか、原則として本国の国籍を喪失することが必要です。なお例外として本人の意志によって本国の国籍を喪失できない場合については、この要件を満たしていなくても帰化が許可される場合があります。
6.憲法遵守要件
日本政府を暴力で破壊することを企て又は主張するもの、あるいはそうした団体の結成又は加入している者は帰化が許可されません。
なお、日本と特別な関係を有する外国人(日本で生まれた者、日本人の配偶者、日本人の子、かつて日本人であった者等で、一定の者)については、上記の帰化の要件を一部緩和しています。
※日本語能力
日常生活に支障のない程度の日本語能力(会話・読み書き)を有している必要があります。なお、帰化手続きにおいて必要な書類等の案内は日本語で行います。
帰化の許可は法務大臣の裁量によるものであるため、これらの要件を満たしていても許可が下りるとは限りません。こちらでご紹介した要件は帰化するための必要最低限の内容とされています。
引用:水戸地方法務局「帰化の要件について」
法務省「国籍Q&A」
4) 帰化申請の流れ
①法務局に相談する
必要となる書類が国籍によって異なるため、管轄の法務局に行き確認をします。
国籍・家族構成・職業等につきお話をうかがった上で、
帰化に求められる要件を満たすと判断された場合に、必要な書類を案内していただけます。
※予約制となっています。
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②必要な書類を集める
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③法務局に相談する
すべての書類を取得できたら、法務局に行き書類を確認してもらいます。
問題ないと認められたら、書類を入手して記入をします。
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④帰化申請書類の点検と受理
法務局に行き、集めた書類と記載したい申請書を担当官にみてもらいます。
提出書類に不備がなければこの時点で受理されます。
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⑤面接
帰化申請から2、3カ月後に実施されます。
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⑥国籍の離脱手続き
本国の国籍離脱手続きを済ませた後に、
法務局に国籍離脱をしたという証明書を提出します。
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⑦許可・不許可の決定
結果については担当職員から連絡があります。
帰化が許可された場合には許可日の官報に掲載されます。
併せて身分証明書が交付されます。
上記でご紹介した流れは大まかなもので、状況や法務局によって異なります。
参考:水戸地方法務局「帰化手続きのながれについて」
5) 帰化申請のメリット・デメリット
帰化申請をして日本国籍を取得した場合、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。ここでは主なメリット・デメリットをご紹介します。ぜひデメリットも考慮した上で、帰化申請をご検討ください。
〈メリット〉
①ビザの問題がなくなる。
ビザの更新手続きをする必要がなくなるので入管に行く手間が省け、在留カードを携帯する必要がなくなります。そして在留資格による制限がなくなるため、どんな職業にも就くことができます。
②日本のパスポートを持つことができる。
日本のパスポートはビザなしで渡航できる国や地域が189ヵ国と多く(世界第3位-2023年7月現在)ビザなしでも多くの国や地域に旅することが可能となります。そのため、母国に帰る際も長期間でなければビザを発行する必要がない場合があります。そして当たり前のことではありますが、日本への入国・出国も自由に行えます。
③日本人として生活することができる。
帰化申請をすると日本人としての名前を持つことができます。そして日本人と同じように参政権が得られ、同様の社会保障を受けられます。さらに、社会的信用度が上がり住宅や自動車のローンが組みやすくなる等のメリットが挙げられます。
〈デメリット〉
①母国の国籍を失う
日本では二重国籍が認められていないため、母国の国籍を失うこととなります。
仮に、元の国籍に戻したいとなった場合でもできる国とそうでない国があります。それは元の国籍に戻すという「国籍回復制度」という制度を認めている国と認めていない国があるからです。そのため帰化をする前に母国の制度も併せて確認をしておきましょう。
②母国に帰る際にビザが必要となる場合がある。
先ほど、日本のパスポートを取得することで多くの国や地域にビザなしで渡航することができるとご紹介しましたが、国によってはビザが必要となる場合があります。
6) まとめ
帰化が認められれば日本人と同じように生活することができ、職業の選択が自由になります。
しかし、帰化の申請・承認は永住権より更にハードルが高くなり、長い時間と労力を要します。
帰化申請でお悩みの方は当事務所にご相談ください。
【問い合わせリンク】
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