住居支援について


外国人を雇用する際、住居はどうすれば良いのでしょうか?

ここでは気になる住居支援について解説します。


1)住居支援の義務はあるのか?

まず気になるのは、外国人を雇用する企業に住居支援の義務はあるのか?という点です。

住居支援の義務は在留資格によって異なり、以下のようになっています。



技能実習の在留資格外国人を雇用する場合:住宅支援の法令義務がある

特定技能の場合:外国人が住居を確保していない場合に支援の義務がある

技術・人文知識・国際業務の場合:法令義務はない



法令義務の有無は上記の通りですが、外国人が単独で日本の住居を確保することは容易ではありませんから、在留資格に関わらず外国人が必要とする場合はできる限り住居の支援を行うことが求められます。


せっかく外国人の採用を決めて準備を進めたのに、住居が決まらず就職できないと言われてしまっては大変です。

2)求められる住居支援

外国人の日本での住居は以下の3つのパターンに分けられます。


①外国人本人が賃貸契約を結んだ物件

②受け入れ企業が借り上げた物件

③受け入れ企業が提供する社宅・寮

(※技能実習生を雇用する場合、住居支援は②か③のみに限られます。)

①の場合は具体的に、


・物件探しのお手伝い(不動産仲介業者の情報提供、内見に同行する)

・賃貸契約への同行(契約時の日本語サポート、緊急連絡先の提供、連帯保証人になる等)


といった住居支援を行いましょう。


外国人が連帯保証人を見つけられない時は、受け入れ企業の担当者が連帯保証人になるか緊急連絡先を提供するといった対応を行うことが下記の通り義務付けられてることを覚えておきましょう。




賃貸借契約に際し連帯保証人が必要な場合であって、連帯保証人として適当な者がいないときは、少なくとも


・ 特定技能所属機関等が連帯保証人となる 

・ 利用可能な家賃債務保証業者を確保するとともに、特定技能所属機関等が緊急連絡先となる


のいずれかの支援を行う。


参考:法務省 「1号特定技能外国人支援に関する運用要領 -1号特定技能外国人支援計画の基準について」



②と③の場合のルールは次にご紹介します。 

3)住居・住居支援に関するルール

借り上げ物件や社宅の提供といった形での住居支援を行う際には、いくつかルールがあります。



①居室の広さ

技能実習外国人と特定技能外国人は、居室の広さに関してそれぞれ下記のような決まりがあります。


〈技能実習〉

寝室については、床の間・押入を除き、1人当たり4.5㎡以上を確保することとし、 個人別の私有物収納設備、室面積の7分の1以上の有効採光面積を有する窓及び採暖の設備を設ける措置を講じていること 


参考:法務省「技能実習制度運用要領~関係者の皆さまへ~」

※技能実習は他にも物件に関する規定があります。詳しくは上記のサイトをご覧ください。



〈特定技能〉

居室の広さは、一般的に我が国に相当数存在する居室の面積等を考慮し、1人当たり 7.5 ㎡以上を満たすことが求められます(ただし、技能実習2号等から特定技能1号へ在留資格を変更する場合等であって、特定技能所属機関が既に確保 している社宅等の住居に居住することを希望する場合を除く。)。なお、ルームシェアするなど複数人が居住することとなる場合には、居室全体の面積を居住人数で除した場合の面積が7.5㎡以上でなければなりません。 


参考:法務省

「1号特定技能外国人支援に関する運用要領 -1号特定技能外国人支援計画の基準について」




技能実習外国人を雇用する場合は居室の広さが4.5㎡以上、特定技能の場合は7.5㎡以上という決まりがあることを覚えておきましょう。

②徴収額の決まり


又貸しまたは社宅等を賃貸する際、利益をあげてはいけないという決まりがあります。

外国人から賃料を徴収することは可能ですが、実費を超える徴収はできないということです。

徴収額には下記の通り規定があります。


特定技能外国人から費用を徴収する場合については、借上物件の場合、自己所有物件の 場合に応じて、次のとおりでなければなりません。


借上物件の場合 

借上げに要する費用(管理費・共益費を含み、敷金・礼金・保証金・仲介手数料等は含まない。)を入居する特定技能外国人の人数で除した額以内の額


 ・自己所有物件の場合 

実際に建設・改築等に要した費用、物件の耐用年数、入居する特定技能外国人の人数等を勘案して算出した合理的な額


参考:法務省

「1号特定技能外国人支援に関する運用要領 -1号特定技能外国人支援計画の基準について」

4)住居支援・生活に関する注意点

最後に、住居支援を行うにあたって受け入れ企業が注意しておくべき点についてもご紹介します。

①届出の提出

外国人の新しい住居が決まれば、住居を定めてから14日以内に住居地に関する届出を提出する必要があります。提出先は新住所の市区村町です。


90日以内に提出していないと在留資格を取り消し処分にされてしまう場合もあるので、忘れずに提出しましょう。

※特定技能外国人の場合は受け入れ企業が提出を行い、技能実習外国人の場合も監理団体または受け入れ企業が提出を行います。

②家具の用意と合意

企業側で住居に家具を用意する場合は、事前に入居する外国人に相談しましょう。

企業は親切で家具を用意したつもりでも、外国人は「何の説明も無く家具が用意され、その家具代がお給料から引かれている...」と納得できず、トラブルになるケースが多くあります。

家具を用意する場合は、必ず入居する外国人に対して事前に説明と費用の相談を行いましょう。


③ゴミ出しのルール

居住地によって異なるゴミ出しのルールは、外国人にとってかなり難しいものです。

ゴミ出しの曜日・時間、分別の決まりなど、最初に一緒に確認し、教えてあげると良いでしょう。


④近隣トラブルへの対応

マンションやアパートの一室を賃貸する場合は、近隣トラブルにも注意が必要です。

外国人が母国の習慣でホームパーティーを行い、騒音被害で訴えられてしまうなどといったトラブルを防ぐため、日本の集合住宅での暮らし方に関する事前の指導が必要です。



文化が異なるが故のクレームや、外国人であるが故の風評被害などによるトラブルが起きないように配慮しましょう。


ご近所さんへの挨拶の仕方をレクチャーする、トラブルがあった際は駆けつけ一緒に対応するといった努力を企業側も行うことで、近隣の方々と外国人が過ごしやすく生活していくことができるでしょう。

5)まとめ


以上、外国人採用を行う企業に求められる住居支援についてご紹介しました。

上記に挙げた支援・取り組みを必要に応じて行うことで、外国人社員に長く働いてもらえるよう努めましょう。