外国人を雇用する際に
注意すること
~入社後~
外国人を雇用する際に
注意すること
~入社後~
外国人を雇用する場合に、事業主が講ずべき必要な処置について定めているのが、厚生労働省による「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」(以下、本指針とします)です。
指針は、行政庁が国民に対して、責務などを全うするために準拠すべき基本的な方向を示したものです。基本的には、あくまでガイドラインであるので、法的拘束力は認められていません。
しかし、本指針は、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律の第7条に定める事項に関して、同法第8条に基づいて公表された指針であるため、本指針を順守しないと、同法7条違反に問われる可能性があります。
このページでは、本指針に沿って、入社後に事業主が留意すべきことを説明していきます。
なお、本指針における外国人とは、日本国籍を有しない者のことをいい、技術・人文知識・国際業務ビザや特定技能ビザを保有する方、技能実習生も含まれます。
ですが、特別永住者、在留資格が「外交」及び「公用」の方は含まれません。
・賃金の支払い(本指針第4-2-3)
外国人労働者についても、最低賃金法が適用されるため、最低賃金額以上の賃金を支払わなければなりません。
労使協定などが締結されている場合を除き、基本給は全額を支払い、労使協定によって住居費用などが控除される場合であっても、不当な額とならないよう配慮する必要があります。
・労働時間の管理(本指針第4-2-4)
法定労働時間、時間外労働時間の上限規制を遵守し、週休日の確保をはじめ適正な労働時間の管理を行わなければなりません。
さらに、有給休暇の取得を積極的に促し、時期については外国人労働者の意見を尊重しましょう。
労働時間の状況を把握するため、タイムカードなどの客観的に認識できる方法で記録を残しておくよう努めてください。
・身分証などの取り扱い(本指針第4-2-7)
事業主は、外国人労働者のパスポートや在留カードを保管してはなりません。
労働基準法により、外国人労働者の権利に属する金品の返還を請求された場合には、請求から7日以内に返還する必要があります。
・寄宿先(本指針第4-2-8)
事業の附属寄宿舎に外国人労働者を寄宿させる場合は、労働基準法等の定めるところにより、労働者の健康、風紀及び生命の保持に必要な措置を講じましょう。
下記事項の徹底に努めることが必要です(本指針第4-3)。
実施にあたっては、通訳や視聴覚教材、簡易なマニュアルなどを用いて、外国人労働者が正確に理解できる方法で行いましょう。
・安全衛生教育の実施
・労働災害防止に関する教育の実施
・健康診断の実施
・健康相談や指導
・妊産婦への配慮
労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律の第28条第1項に基づき、新たに外国人労働者を雇入れる場合には、「外国人雇用状況の届出」を提出する必要があります(本指針第5)。
雇用保険に加入する場合には、「雇用保険被保険者資格取得届」や「雇用保険被保険者資格喪失届」の提出が「外国人雇用状況の届出」の代わりになりますが、雇用保険に加入しない場合には、「外国人雇用状況の届出」を作成し、必ずハローワークに提出しましょう。
〈届出事項〉
・雇用保険に加入する場合
名前、在留資格、在留期間、生年月日、性別、国籍・地域、
雇用保険被保険者資格取得届又は雇用保険被保険者資格喪失届に記載すべき当該外国人の雇用状況等に関する事項(職種、賃金、住所等)
・雇用保険に加入しない場合
氏名、在留資格、在留期間、生年月日、性別及び国籍・地域、在留カードの番号
なお、上記事項以外の事項は、外国人のプライバシー保護の観点から聴取するべきではありません。
〈確認方法〉
上記事項を確認するにあたっては、当該外国人労働者の在留カード(在留カードを所持しない者にあっては旅券又は在留資格証明書)等の提示を求め、届出事項を確認しましょう。
もっとも、届出対象は、雇入れる者について、通常の注意力をもって外国人であると判断できる場合に限られます。
通常の注意力をもって外国人であると判断できる場合とは、特別の調査を伴うものではなく、氏名や言語等から外国人であることが明らかな場合をいいます。
〈届出の期限〉
・雇用保険に加入する場合
雇入れた月の翌月10日まで
・雇用保険に加入しない場合
雇入れた月の翌月の末日まで
事業主は、労働・社会保険に係る法令の定めるところに従い、必要な保険関係手続きを行わなければなりません(指針第4-4-1)。外国人労働者の加入が必要となるのは、就労に関係する「健康保険」「労災保険」「労働保険」「年金保険」の4つです。
社会保険への加入が法律によって義務付けられている事業所(適用事業所)に雇用され、健康保険に加入する場合、会社側は雇用から5日以内に「被保険者資格取得届」を電子申請、郵送または窓口持参の方法により日本年金機構へ提出する必要があります。
従業員は事業主が手続きに必要となる基礎年金番号通知書・年金手帳またはマイナンバーカードを用意する必要があります。
健康保険については下記もご参照ください。
事業主は労働者を1人でも雇った場合、初めて雇った日から10日以内に「保険関係成立届」と「履歴事項全部証明書」を所轄の労働基準監督署に提出する必要があります。
加えて、50日以内に「労働保険概算保険料申告書」を労働基準監督署に提出しなければなりません。
これらの書類を一度提出すれば、新入社員が入社するたびに個別に加入手続きをする必要はありません。
雇用保険の適用対象となる者を初めて雇う場合には、事業所を管轄するハローワークに「事業所設置届」、「雇用保険被保険者資格取得届」を提出する必要があります。
その後、新たに雇い入れるごとにその都度、ハローワークに「雇用保険被保険者資格取得届」を提出しなければなりません。そして、事業主は、この届出の提出によりハローワークから交付された「雇用保険被保険証」を本人に渡します。
取得届の提出期限は取得月の翌月10日までです。
外国人従業員の加入手続きの際は、「雇用保険被保険者資格取得届」に下記の事項を記載します。
①氏名 ②在留資格 ③在留期間 ④生年月日 ⑤性別 ⑥国籍・地域
⑦資格外活動許可の有無 ⑧在留カード番号 ⑨雇入れに係る事業所の名称及び所在地など
「雇用保険被保険者資格取得届」の「17」~「23」欄に上記事項を記入してハロー ワークに提出することによって、外国人雇用状況の雇入れの届出を行ったこ とになります。
なお、上述した通り、外国人を雇用する事業主は、雇入れおよび退職に際して、ハローワークへ「外国人雇用状況の届出」を提出することが義務付けられています。
雇用保険に加入する場合には、「雇用保険被保険者資格取得届」や「雇用保険被保険者資格喪失届」の提出が「外国人雇用状況の届出」の代わりになりますが、雇用保険に加入しない場合には、「外国人雇用状況の届出」を作成し、必ずハローワークに提出しましょう。
2020年3月から、「在留カード番号の届出」が必要になりました。雇用保険被保険者資取得届とは別に、在留カード番号記載様式が用意されています。
記載事項は以下のとおりです。
①事業所番号、②事業所名、③在留カード番号
雇用保険被保険者以外であれば、外国人雇用状況届出書に在留カード番号を記載してください。
労災保険・雇用保険については下記もご参照ください。
健康保険への加入と同様に、適用事業所に雇用され、厚生年金保険に加入する場合は、事業う主は雇用から5日以内に「被保険者資格取得届」を電子申請、郵送または窓口持参の方法により日本年金機構へ提出する必要があります。
年金保険については下記もご参照ください。
事業主は、外国人労働者が病気や負傷等をした場合に、労働災害補償給付や傷病手当金について、外国人労働者やその家族から相談されたら、相談に応じ、場合によっては必要な援助を行うよう努める必要があります(本指針第4-4-2)。
事業主は、外国人労働者を常時10人以上雇用するときは、人事課長等を雇用労務責任者(外国人労働者の雇用管理に 関する責任者をいう。)として選任する必要があります(本指針第6)。
「常時10人以上」というのは、事業所単位のことであり、パートやアルバイトといった非正規社員であっても含まれます。
雇用労務責任者の選任方法について、決まりは定められていませんが、人事課長等人事を統括する者が適任とされています。
選任後に、届出等の提出は不要です。
日本人労働者とは異なるサポートとして、在留資格の更新等に関する援助があります(本指針第4-5-6)。
外国人労働者が在留資格を変更または在留期間の更新を受けようとするときは、その手続きを行うために必要な配慮または援助をすることが求められます。
例えば、在留資格に関する手続きを行うには、入国管理局へ出向く必要がありますが、外国人労働者が入国管理局へ足を運べるようにまとまった時間を確保しましょう。
加えて、申請手続きに要する時間を、勤務時間の扱いとするのか、有給休暇の扱いとするのかを事前に明確化しておきましょう。
外国人労働者の在留期間が満了し、在留資格の更新がされない場合には、当該外国人労働者の雇用関係を終了させ、帰国のための諸手続きに必要となる援助を行わなければなりません。
外国人労働者が一時帰国または帰国するにあたり、帰国に要する旅費を捻出できない場合には、旅費を負担するなどして円滑な出国ができるよう配慮しましょう。
外国人労働者が円滑に職場に適応し、職場での評価や待遇に納得しつつ就労できるように下記のような環境の整備が求められています。(本指針第4-5-1、第4-5-4)。
・円滑なコミュニケーションを可能とするため、社内規定等の多言語化
・職場で求められる資質、能力等の社員像の明確化
・評価や賃金決定、配置等の人事管理に関する運用の透明性・公正性の確保
・母国語での導入研修や教育訓練の実施
事業主は、外国人労働者が日本社会に適応できるように、日本語教育及び日本の生活習慣、文化、風習、雇用慣行等について理解を深めるための支援を行う必要があります(本指針第4-5-2)。
また、安心して日常生活を送れるように、必要であれば、行政機関や医療機関、金融機関等に関する各種情報の提供や同行等も行いましょう。
外国人労働者が、職業上・生活上の悩みを相談できる窓口の設置や体制の整備、行政機関の相談窓口の利用の教示をするよう努めてください(本指針第4-5-3)。
今回は入社後に気を付けるべきことについて説明いたしました。
外国人従業員は言語や文化の違いから手続き等について理解するのは容易ではないため、より丁寧なフォローが必要となります。しかし、外国人労働者へのサポートが手厚くなればなるほど、日本人労働者からは「特別扱いしている」と捉えられてしまうこともあります。日本人労働者と外国人労働者とが、共に文化、慣習等の多様性を尊重しつつ共存できるように、バランスをとりながら、全社員が満足できる職場を目指しましょう。
募集採用時、離職時に必要となることについては下記をご参照ください。