外国人を雇用する際に
注意すること
~離職時~
外国人を雇用する際に
注意すること
~離職時~
外国人を雇用する場合に、事業主が講ずべき必要な処置について定めているのが、厚生労働省による「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」(以下、本指針とします)です。
指針は、行政庁が国民に対して、責務などを全うするために準拠すべき基本的な方向を示したものです。基本的には、あくまでガイドラインであるので、法的拘束力は認められていません。
しかし、本指針は、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律の第7条に定める事項に関して、同法第8条に基づいて公表された指針であるため、本指針を順守しないと、同法7条違反に問われる可能性があります。
このページでは、本指針に沿って、入社後に事業主が留意すべきことを説明していきます。
なお、本指針における外国人とは、日本国籍を有しない者のことをいい、技術・人文知識・国際業務ビザや特定技能ビザを保有する方、技能実習生も含まれます。
ですが、特別永住者、在留資格が「外交」及び「公用」の方は含まれません。
安易な解雇等は、外国人労働者の日常生活を不安定にさせるだけでなく、在留資格まで奪い、日本で生活を続けることができなくなります。
事業主は、労働契約法上、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であると認められる場合でない限り、外国人労働者に対して、安易な解雇及び安易な雇止めをすることはできません(本指針第4-6-1、第4-6-2)。
また、疾病による療養や妊娠・出産による休暇を理由とした解雇やその他不利益な取り扱いも認められていません(本指針第4-6-4、第4-6-5)。
労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律の第28条第1項に基づき、雇用する外国人労働者が離職する場合には、「外国人雇用状況の届出」を提出する必要があります(本指針第5)。
雇用保険に加入している場合は、「雇用保険被保険者資格喪失届」の提出が「外国人雇用状況の届出」の代わりになりますが、雇用保険に未加入の場合には、「外国人雇用状況の届出」を作成し、必ずハローワークに提出しましょう。
・雇用保険に加入している場合
名前、在留資格、在留期間、生年月日、性別、国籍・地域、
雇用保険被保険者資格喪失届に記載すべき当該外国人の雇用状況等に関する事項(職種、賃金、住所等)
・雇用保険に未加入の場合
氏名、在留資格、在留期間、生年月日、性別及び国籍・地域、在留カードの番号尾
なお、上記事項以外の事項は、外国人のプライバシー保護の観点から聴取するべきではありません。
上記事項を確認するにあたっては、当該外国人労働者の在留カード(在留カードを所持しない者にあっては旅券又は在留資格証明書)等の提示を求め、届出事項を確認しましょう。
もっとも、届出対象は、当該労働者について、通常の注意力をもって外国人であると判断できる場合に限られます。
通常の注意力をもって外国人であると判断できる場合とは、特別の調査を伴うものではなく、氏名や言語等から外国人であることが明らかな場合をいいます。
・雇用保険に加入している場合
離職した日の翌日から起算して10日以内
・雇用保険に未加入の場合
離職した月の翌月の末日まで
事業主は、労働・社会保険に係る法令の定めるところに従い、必要な保険関係手続きを行わなければなりません(本指針第4-4-1)。外国人労働者が加入する「健康保険」「労災保険」「労働保険」「年金保険」に関して、必要となる手続きを紹介します。
退職までに、本人及びその扶養者分の健康保険証を回収する必要があります。
退職日の翌日から5日以内に、事業所の所在地を管轄する年金事務所へ、「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届」を提出しなければなりません。
「健康保険被保険者資格喪失確認通知書」は、退職者が国民健康保険に切り替える場合に必要となるため、コピーを渡すようにしましょう。
国民健康保険への適用のため、手続きが必要になる場合には、その旨も教示してください。
健康保険については下記もご参照ください。
労災保険については、外国人労働者が退職しても、特に手続きは必要ありません。
雇用保険被保険者が離職する場合には、「雇用保険被保険者資格喪失届」と「雇用保険被保険者離職証明書」をハローワークに提出する必要があります。これらを提出すると、「離職票」が発行されます。
喪失届の提出期限は離職日から10日以内です。
外国人従業員の離職手続きには、「雇用保険被保険者資格喪失届」に下記の事項を記載します。
①氏名 ②在留資格 ③在留期間 ④生年月日 ⑤性別 ⑥国籍・地域
⑦在留カード番号⑧離職に係る事業所の名称及び所在地など
表面の「住所(被保険者の住所又は居所)」欄や裏面の「14」~ 「19」欄に上記事項を記入してハローワークに 提出することで、外国人雇用状況の離職の届出を行ったことになります。
2020年3月から、「在留カード番号の届出」が必要になりました。雇用保険被保険者資格喪失届とは別に、在留カード番号記載様式が用意されています。
記載事項は以下のとおりです。
①事業所番号、②事業所名、③在留カード番号
雇用保険被保険者以外であれば、外国人雇用状況届出書に在留カード番号を記載してください。
また、外国人従業員が退職する際には、「退職証明書」も発行しましょう。
労働基準法第22条に従って交付するものであり、離職証明書や離職票のように公的文書ではありませんが、外国人従業員が転職した後も就労ビザを引き続き有効にするために、入国管理局で必要になることがあります。
あくまでも、その会社が独自に発行する文書であり、退職者が交付を請求する場合にのみ交付義務が発生します。
記載事項は下記の通りです。
①試用期間、②業務の種類、③当該事業における地位、④賃金、⑤退職理由
労災保険・雇用保険については下記もご参照ください。
健康保険と同じであり、退職日の翌日から5日以内に、事業所の所在地を管轄する年金事務所へ、「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届」を電子申請、郵送または窓口持参の方法により提出しなければなりません。
年金保険については下記もご参照ください。
事業主の都合でやむを得ず離職する場合には、再就職を希望する外国人労働者に対して、関連企業へのあっせん、教育訓練などの実施、受講のあっせん、求人情報の提供など、在留資格に応じた再就職が可能となるように、必要な援助を行うことが求められています(本指針第4-6-3)。
なぜなら、在留資格取消制度により、帰国を余儀なくされるおそれがあるためです。
就労ビザは、在留資格の取り消し事由に該当しない限り、在留期間中は有効です。
入管法は、在留資格の取消事由として、現在付与されている在留資格に該当する活動を3か月以上行わずに在留していることと定めています(22条の4第1項6号)。
「技術・人文知識・国際業務」や「特定技能」などの在留資格の場合、退職から3か月以内であれば引き続き有効ですが、3か月以内に再就職できないと、在留資格を取り消され、帰国を余儀なくされる可能性が生じます。
そのため、やむを得ず解雇等を行うときは、再就職先が決まるまで、支援を継続することがトラブル回避のためにも重要です。
なお、解雇後3か月以上就労していない場合でも、正当な理由がある場合には在留資格の取り消し事由には該当しません(22条の4第1項6号括弧書き)。具体的には、再就職活動の実績があれば、結果として再就職が実現していなくても、在留期間中にビザが取り消されない可能性があります。
では、再就職活動中に就職先が決まらないまま在留期間満了日が近づいた場合、どうすればよいでしょうか。
この場合、これまでと同じ在留資格でビザを更新することはできませんが、日本で引き続き再就職活動をすることを希望するなら、在留資格を「特定活動」に変更するための許可申請をしましょう。
特定活動の在留資格が認められた場合、最長6か月間、引き続き日本に滞在することが可能となります。
今回は離職時に注意することについて紹介しました。
募集・採用時、入社後に気を付けるべきことは以下の記事をご参照ください。