外国人を雇用する際に

注意すること

~募集・採用時~


1) 外国人労働者雇用管理指針について 

外国人を雇用する場合に、事業主が講ずべき必要な処置について定めているのが、厚生労働省による「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」(以下、本指針とします)です。


指針は、行政庁が国民に対して責務などを全うしてもらうため準拠すべき基本的な方向を示したものです。基本的には、あくまでガイドラインであるので、法的拘束力は認められていません。


しかし、本指針は、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律の第7条に定める事項に関して、同法第8条に基づいて公表された指針であるため、本指針を遵守しないと、同法7条違反に問われる可能性があります。


このページでは、本指針に沿って、募集時から採用時に事業主が留意すべきことを説明していきます。



なお、本指針における外国人とは、日本国籍を有しない者のことをいい、技術・人文知識・国際業務ビザ特定技能ビザを保有する方、技能実習生も含まれます。

ですが、特別永住者、在留資格が「外交」及び「公用」の者は含まれません。

2) 募集時に注意すること

指針では、外国人を募集するにあたって、雇用しようとする外国人に対して、書面の交付または電子メール等の送信の方法により、以下の内容を明示するよう定めています(本指針第4-1-1-イ)。


①当該外国人が従事すべき業務の内容

②労働契約の期間

③就業の場所

④労働時間・休日

⑤賃金

⑥労働・社会保険の適用に関する事項等

⑦渡航又は帰国に要する旅費その他の費用の負担の有無や負担割合

⑧住居の確保


上記事項を明示するにあたっては、当該外国人が使用する言語や平易な日本語を使って、明示するよう努めることが必要となります。


事業主が、外国人労働者の斡旋を受ける場合には、無料で紹介事業を行っている地方公共団体や事業許可を受けている事業者など適切な職業紹介事業者から受け入れなければなりません。


また、募集要項に、国籍による条件を付けるなど国籍を理由とした差別的な取り扱いをすることは禁止されています。

3) 採用時に注意すること

①) 採用選考

採用選考過程において、気を付けるべきことは下記の点になります。


まず、当該外国人が在留資格上、自社の業務に従事することが認められている者かを確認しましょう(本指針第4-1-2)。

従事することが認められていなければ、雇用することはできません。


外国人が採用後に就労資格を取得する場合には、自社の業務で在留資格を所得できるかを採用する前によく確認する必要があります。

採用が決まっても、自社の業務では在留資格が取得できず、結局雇用自体を諦めざるを得ないケースが少なくないからです。


次に、選考に当たっては、在留資格の範囲内で、外国人が自己の能力を十分に発揮できるよう、公平な採用選考に努める必要があります。

②) 労働契約締結時

本指針は、外国人の採用であっても、適正な労働条件を確保することを求めています。


事業主が、労働者の国籍を理由に賃金や労働時間その他の労働条件について、差別的な取り扱いをすることは禁じられています。


事業者は、労働契約締結にあたって、下記の事項を書面の交付または電子メール等の送信により、明示する必要があります。


・賃金

・労働時間

・賃金

・賃金の決定方法

・賃金の計算方法

・賃金の支払方法

・税金

・労働保険・社会保険の保険料



次に、事業主は労働基準法等の周知を行う必要があります。労働基準法等の内容や、就業規則、労使協定などを多言語対応の資料を用いて丁寧に説明することが求められます。


外国人が就業規則等をきちんと把握しないまま入社し、認識の齟齬によりトラブルに発展する事態を避けるためにも、周知を徹底しましょう。


ちなみに、労働基準局は労働基準法等関係法令を解説したパンフレットを6ヵ国語(英語、ポルトガル語、スペイン語、中国語、ハングル、タガログ語)で作成しています。


雇入れ時に、労働保険・社会保険制度の周知をすることも忘れてはなりません。行政機関が作成している多言語対応の広報資料などを活用して、理解の促進を図りましょう。


社会保険制度等については日本に在住する全ての人が加入する義務があり、外国人であっても必ず加入しなければなりません。


しかし、外国人の中には「社会保険料が天引きされると手取りが少なくなる」「日本の社会保険料が自国に比べて高い」などの理由から、保険料の支払いを拒む場合があります。

外国人が加入を拒んだ場合、悪質なケースでは、懲役や罰金が科されることもあるため、未加入は会社にとってリスクが大きいです。


そのため、加入が義務であること、様々な給付金制度が整っており、メリットは少なくないこと、社会保障協定の締結があれば保険料の二重払いなどのデメリットを解消できることなどを説明し、加入への理解を求めましょう。


そして、労働・社会保険に係る法令の定めるところに従い、加入に必要な手続きを早めに進めましょう。


社会保障制度については下記もご参照ください

⇒ 健康保険について

  労働保険について

  年金制度について

4) まとめ


今回は募集採用時に注意することについて紹介しました。


入社後、離職時に気を付けるべきことは以下の記事をご参照ください。


⇒ 外国人を雇用する際に注意すること ~入社後~

  外国人を雇用する際に注意すること ~離職時~