建設分野における
外国人材の受け入れについて
ー受け入れることのできる在留資格や必要となる届出について詳しく紹介ー
ー受け入れることのできる在留資格や必要となる届出について詳しく紹介ー
近年では技能労働者の高齢化や、建設産業の処遇改善が進んでいないことから、建設産業において担い手不足は大きな課題となっています。人材を確保する手段の1つとして、外国人雇用が挙げられます。
そこで今回は、外国人を受け入れるために必要な許可や、建設業に就労できる在留資格について、ご紹介します。
「技能実習」は、発展途上国の若く意欲的な方たちが、日本で技能を学び母国に帰国して、経済発展に貢献してもらうための資格です。1993年までは、「研修生」と呼ばれていましたが、それ以降は「技能実習生」と位置づけられました。外国人技能実習制度は、日本国内において技能や技術、知識を身に付けた外国人が発展途上国である母国で経済発展に寄与できるようにサポートするのが最終目的となっています。そのため、人手不足を補うための単純労働は禁止されています。
受け入れ可能な職種は、建築大工、とび、鉄筋施工、左官、タイル貼り、配管、サッシ施工などが挙げられます。
「技能実習」について詳しく知りたい方は、こちらをお読みください。
ここに分類される在留資格の種類は、「定住者」「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」の4つです。身分や地位に基づいた在留資格は有効期限が無限のうえに、日本国内での活動の制限もありません。いずれかの在留資格を持っている場合ですと、単純労働を目的とした外国人雇用も可能です。
資格外活動は先に述べた在留資格に当てはまらず、就労目的以外で日本に来た外国人が対象となる在留資格です。対象者は留学生、家族滞在などの在留資格を持つ方です。資格外活動ですと、週に28時間以内の労働のみ認められているので、アルバイトとして雇用される事が多いです。また、単純労働を目的とした雇用も可能となります。
「特定技能」は2019年4月にスタートしたばかりの新しい在留資格です。特定技能制度は、国内人材を確保することが困難な状況にある産業分野において、一定の専門性・技能を有する外国人を受け入れることを目的とする制度です。「特定技能」には1号と2号の2種類があり、1号は通算5年間の滞在が認められていますが、それに対し2号は滞在期間に上限がありません。「特定技能」を申請するには、「日本語の試験」と「建設分野特定技能1号評価試験」の双方に合格するか、日本での建設業における3年以上の実務経験があることです。
業務内容は建設業全般とそれに付随する業務の両方で働く事ができます。
「特定技能」について詳しく知りたい方は、こちらをお読みください。
「技術・人文知識・国際業務」の在留資格は、大卒程度や実務経験を積んだ外国人が、日本の会社に就職する際に取得できます。
業務内容は専門的な知識やスキル、感受性を活かせるものでなければならず、大学・専門学校において専攻した科目が、従事しようとする業務と関連していることが必要です。または10年以上の実務経験を積む必要があります。
この在留資格を持っている人は、施工管理や製図といった技術職に従事することができますが、建築学部などの大学を卒業していることが必要となります。一方で営業職・事務職の場合では、建築と関わりのない学部を卒業していても問題ありません。
また、単純作業のような仕事ではこの在留資格は取得できません。
「技術・人文知識・国際業務」についてはこちらで詳しく紹介しております。
建設分野において外国人を雇用する際には、以下のポイントに注意しましょう。
必ず雇用する前に在留カードを提示してもらい、在留資格の確認をしましょう。日本での就労が認められていない外国人を雇用してしまうと、「不法就労助長罪」に問われます。
「外国人雇用状況の届出」とは、外国人労働者の雇用状況の把握と、外国人労働者に対する適切な雇用管理の促進を図ること等を目的としたものです。そして、外国人の雇入れ及び離職の際に全ての事業主が届け出る必要があります。(在留資格「外交」、「公用」及び特別永住者を除く)ですが、該当外国人が雇用保険被保険者かどうかで、手続きが変わってきますのでわけてご紹介いたします。
◎雇用保険の被保険者となる外国人の場合
雇用保険の被保険者となる外国人の場合には「雇用保険被保険者資格取得届」に「国籍・地域」や「在留資格」などを記入して提出することによって、外国人雇用状況の雇入れの届出を行ったことになります。提出先は、雇用保険の適用を受けている事業所を管轄するハローワークに届け出てください。雇用保険の被保険者となる外国人の場合「e-Gov」電子申請からの届出も可能です。その場合、届出用紙による届出は不要です。
◎雇用保険の被保険者とならない外国人の場合
「外国人雇用状況の届出」を当該外国人が勤務する事業所施設の住所を管轄するハローワークに提出しなければなりません。また退職する時も同様に提出する必要があります。届出期間は、雇入れ、離職の場合ともに翌月末日までです。届出様式はハローワークの窓口で配布しているほか、厚生労働省ウェブサイトからダウンロードすることもできます。また、ハローワークインターネットサービスの「外国人雇用状況届出システム」で届出することも可能です。
「外国人雇用状況の届出」について詳しくは厚生労働省が発行している、次のパンフレットをご参照ください。➡「外国人雇用はルールを守って適正に」
「外国人建設就労者等現場入場届出書」とは現場に従事する外国人を管理するための書類です。技能実習生だった外国人を雇用する場合に、一次下請負会社以下の企業が元請負会社に提出する必要があります。建設現場に入場する際に必要な書類です。
労災防止のためにも外国人労働者を対象とした安全衛生教育の実施が必要です。日本人の労働者と同様に、外国人労働者についても労働安全衛生法をはじめとする関係法令の適用はあります。また外国人労働者には母国の文化や地域の独自な文化があり、その人の思考・判断に大きな影響を与えています。さらに日本語の理解が不十分なことや、それに伴うコミュニケーション不足などを考慮して、安全教育に取り組むことが大切です。そして外国人労働者だけでなく、共に働く日本人労働者も文化や習慣等の多様性を理解することが重要です。
外国人採用後に起きやすいトラブルとその対策について、こちらのページにてご紹介しております。併せてお読みください。
実際に建設業において外国人を受け入れるには以下の手順を踏む必要があります。
①建設業法第3条許可の取得(地方整備局等又は各都道府県)
受け入れ企業は建設業法第3条の許可を受けていることが必要です。
具体的には建設特定技能受入計画に建設業許可番号を記載し、
有効期間内の建設業許可通知書(許可通知書又は許可証明書)の写しが必要となります。
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②JACに間接的又は直接的に加入
建設企業が特定技能外国人を受け入れるためには、
特定技能外国人受入事業実施法人である「(一社)建設技能人材機構(JAC)」の
正会員団体のいずれかに加入、または賛助会員として加入している必要があります。
JACとは、深刻化する人材不足を抱える日本の建設分野における
外国人材の適正かつ円滑な受入を実現するために2019年4月に設立された組織です。
入会のご案内についてはこちらのページをお読みください。
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③建設キャリアアップシステムへの登録
建設キャリアアップシステムは、技能者ひとり1人の就業実績や資格を登録し、
技能の公正な評価、工事の品質向上、現場作業の効率化などにつなげるシステムです。
建設特定技能受入計画の認定要件の一つとして、
受入企業及び1号特定技能外国人の建設キャリアアップシステムへの登録が必要です。
建設キャリアアップシステムの登録については、
運営主体である建設業新興基金のホームページをご覧ください。
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④特定技能雇用契約に係る重要事項説明
受け入れ企業は必ず1号特定技能外国人に支払われる報酬予定額や業務内容等について、
事前に当該外国人が十分に理解することができる言語を用いて説明し、
雇用契約に係る重要事項について理解していることを確認する必要があります。
国土交通省のホームページには、雇用契約に係る重要事項事前説明書を、
10カ国語で併記した参考例が掲載されています。
外国人への説明には母国語併記のものを使用してください。
こちらからご確認いただけます。
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⑤特定技能雇用契約の締結
特定技能雇用契約の大まかなポイントを3つご紹介します。
ⅰ報酬の額について 実際に当該1号特定技能外国人と同等の経験を有する日本人技能者に
支払っている報酬と比較し、適切な報酬予定額を設定することが必要です。
ⅱ月給制の採用について 建設分野の特定技能外国人制度では特定技能外国人の安定的な報酬を確保する
ため、仕事の繁閑により報酬が変動しないこと、すなわち「月給制」によりあ
らかじめ特定技能外国人との間で合意を得た額の報酬を毎月安定的に支払うこ
とが必要です。受入企業で雇用している他の職員が月給制でない場合であって
も、1号特定技能外国人に対しては月給制による報酬の支払が求められます。
ここでいう「月給制」とは「1か月単位で算定される額」(基本給、毎月固定
的に支払われる手当及び残業代の合計)で報酬が支給されることを指します。
ⅲ昇給等について 技能の習熟に応じて昇給を行うことが必要となり、その昇給見込み額等をあら
かじめ特定技能雇用契約や建設特定技能受入計画に記載しなければなりませ
ん。また、賞与・各種手当・退職金についても日本人と同等に支給する必要が
あります。
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⑥建設特定技能受入計画の認定申請(オンライン申請)
受入企業は、建設特定技能受入計画を作成し、国土交通大臣に認定申請を行うことが必要です。
試験合格者である外国人を雇用する場合又は試験免除者である外国人を雇用する場合の
いずれの場合であっても、新たに特定技能雇用契約を結ぶ場合には、
必ず国土交通大臣の認定が必要となります。
※現に有する在留資格の在留期間満了日(または入国予定年月日)の半年前から申請可能です。
建設特定技能受入計画の審査は、受入企業の主たる営業所を管轄する地方整備局等が担当します。
地域によっては審査が完了するまでに3~4ヶ月かかる場合があります。
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⑦1号特定技能外国人支援計画の作成
受入企業は1号特定技能外国人が活動を安定的かつ円滑に行うことができるよう職業生活上、
日常生活上又は社会生活上の支援を実施する必要があります。
そのため、受入企業は「1号特定技能外国人支援計画」を作成し、
各種基準に適合していることなどが求められます。
この支援計画は、在留資格変更許可申請又は在留資格認定証明書交付申請の際に必要です。
受入企業が実施しなければならない支援については、こちらのページからご確認いただけます。
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⑧「在留資格変更許可申請」または「在留資格認定証明書交付申請」
(窓口またはオンライン申請(地方出入国在留管理局)
ⅰ日本国内に在留している外国人を採用する場合➡在留資格変更許可申請
現に有する在留資格の在留期間満了日の2ヶ月前から申請可能
ⅱ海外から来日する外国人を採用する場合➡在留資格認定証明書交付申請
入国予定年月日の3か月前から申請可能
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⑨外国人の受け入れ
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⑩1号特定技能外国人受入報告書の提出(オンライン申請)
受入企業は外国人の受け入れ後、原則として1か月以内に「受入報告書」(オンライン)
を用いて国土交通大臣に報告を行うことが必要です。
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⑪受け入れ後講習又は研修の受講
当該外国人に対して国土交通大臣が指定する受入れ後、
概ね6ヵ月以内に講習を受講させることが必要です。
この講習を受講させない場合には、建設特定技能受入計画の認定要件を満たさないもの
として取り扱われます。当該講習については、適正就労監理機関であるFITS
(国際建設技能振興機構)から受入企業に対し、日時や場所等の案内がなされますので、
受講可能なものを選択してください。
ただし、①JACが受入れ後講習に相当する内容を当該外国人に来日前に行った場合
又は
②建設特定技能受入計画の認定前に受入企業が、FITSによる事前巡回指導を受けた場合には、
この講習の受講義務は免除されます。
参考:一般社団法人建設技能人材機構「受入れまでのフロー」
①事前準備
組合等の定款変更(「外国人建設就労者受入事業」の事業追加)、無料職業紹介事業の届出の変更、送り出し機関との 協定書の締結等、特定監理団体になろうとする団体において所要の事前準備を実施します。
⇓
②特定監理団体の認定申請【国土交通省】(優良な監理団体に限定)
特定監理団体になろうとする監理団体は、国土交通大臣に特定監理団体の認定を申請します。
「優良な監理団体」とは一般監理事業を行うことができる監理団体のことを指します。
法令違反をしていないことや、相談体制などが一定の要件を満たした
監理団体だけがなることができます。
⇓
③適正監理計画の認定申請【国土交通省】(優良な受け入れ企業に限定)
受入建設企業になろうとする者は、第4の認定を受けた特定監理団体と共同で、
外国人建設就労者の適正な監理に関する計画(以下「適正監理計画」という。)を策定し、
受入建設企業になろうとする者ごとに国土交通大臣に
認定を申請(特定監理団体の認定後でなければ申請不可)します。
⇓
④在留資格認定証明書交付申請等【各地方入国管理局】
各地方入国管理局に対して、在留資格認定証明書交付申請等、外国人建設就労者の入国に係る
手続きを実施するという流れです。
⇓
⑤外国人の受け入れ
参考:国土交通省「外国人建設就労者受入事業の運用状況について」
①募集
⇓
②選考~雇用
ある程度、人数が集まったら日本人を採用するのと同じように書類選考や面接を行います。
不法就労助長罪に問われないよう、
在留資格の確認も怠らないようにしましょう。
必ずパスポートと在留カードで本人確認をしてください。
在留資格の確認方法はこちらのページでご紹介しています。
そして内定を出したら労働契約を締結します。
採用後のトラブルを防ぐためにも
雇用契約書は外国人本人が理解できる言語で作成することを推奨します。
厚生労働省が英語や中国語、ベトナム語等8か国語を併記した
「外国人労働者向けモデル労働条件通知書」を公開しているので、是非ご活用ください。
⇓
③在留資格申請
在留資格取得のためには、必要書類を揃えて出入国在留管理庁に申請を行います。
申請を行うのは企業と外国人が雇用契約を結んだ後で、
申請を行うことができるのは本人や本人を採用する企業・団体、行政書士等です。
申請内容は「認定」、「変更」、「更新」の3通りです。
「認定」は外国人が母国から初めて日本に働きにやって来る際、
「変更」は既に留学等のビザで日本に滞在している外国人が、技人国ビザへ切り替える際、
「更新」は現時点で保有している技人国ビザの在留期間満了に伴い、
再び技人国の在留資格を手に入れる際に、それぞれ申請する括りです。
申請からビザ取得までにかかる期間は、認定の場合は約1ヶ月〜3ヶ月
変更と更新の場合は約2週間〜2ヶ月です。
実際には、申請した出入国在留管理局の混み具合などによっても前後します。
申請書は出入国在留管理庁のウェブページからフォーマットをダウンロードし、
記入する必要があります。他にも申請に必要なものがありますが、
それは所属機関の形態や申請内容によって異なるため、詳しくはこちらをご参照ください。
[参考:出入国在留管理庁「在留資格『技術・人文知識・国際業務』」]
⇓
④外国人の受け入れ
◎採用後にはハローワークへ「外国人雇用状況の届出」が必要となります。
不法就労防止の観点から、外国人の雇い入れの際にはその氏名、
在留資格などをハローワークへの届出が求められます。
また、離職時も同様に届出が必要となります。
※雇用保険の被保険者となる外国人の場合には「雇用保険被保険者資格取得届」に
「国籍・地域」や「在留資格」などを記入して提出することによって、
外国人雇用状況の雇入れの届出を行ったことになります。
注意事項等については下記のページからお確かめください。
建設業特有の手続きはありませんが、
先ほどもご説明した通り「技術・人文知識・国際業務」の場合だと
一般的な現場作業や単純作業は認められておらず、
高度な専門的知識やスキルを活かした業務にしか就くことができません。
そのため業務内容や会社の状況等についての説明を求められる場合もありますが、
ケースによって異なりますので不安や疑問に思う方はぜひ当法人までご相談ください。
お問い合わせリンク:info@visaoffice.jp
以上、建設業において外国人を受け入れる際に必要な許可や在留資格についてご紹介しました。人手不足が大きな課題となっている建設分野において外国人を受け入れることは、有効な対策の1つであると言えるでしょう。もし外国人を受け入れる際には、今回ご紹介した事に注意して受け入れるようにしましょう。